約2,000件もの行政指導の元凶!アスベストのみなし工事について徹底解説

アスベストは、その健康上のリスクから建築物への使用が2006年から厳しく禁止されています。

そのため、改修や解体の際に作業員がアスベストの粉じんを吸い込み、健康被害を引き起こさないためにも、 アスベスト含有について事前に調査し報告することが大気汚染防止法にて義務化されています。

しかし、令和4年の環境省による全国一斉パトロールにて、約2,000件もの行政指導が入りました。

これは、アスベストに関する事前調査の結果の報告・掲示の不備に関するもので、アスベストのみなし工事に関する勘違いが一因となっています。

この記事では、アスベスト関連のみなし判定工事がなぜこれほど多くの勘違いを引き起こしているのかなどを例もふまえて徹底解説します。

そしてアスベストの事前調査が義務化された背景から、事前調査が不要とされる特定のケース、そしてそのような場合における法的な要件まで詳しく解説します。

目次

そもそもなぜアスベスト事前調査が必要なのか?

アスベスト事前調査は、建築物や工事現場でのアスベストばく露リスクを特定し、人々の健康を守るために不可欠です。

アスベストの微細な粒子は空気中に浮遊し、気づかないうちに吸引しているが多く、石綿肺や肺がんなどの深刻な疾患を引き起こすリスクがあります。アスベストの事前調査によって、これらの健康リスクを未然に防ぐための適切な安全対策を講じることが可能になります。

2022年4月からはアスベストに関する事前調査の報告の義務化

2022年4月より、アスベスト含有建材の有無に関わらず、特定の工事では事前調査の結果を電子システム「Gビズ」を通じて報告することが法的に義務付けられました。

石綿事前調査結果報告システム

報告の対象工事は以下の通りです。

  • 床面積合計80平米以上の解体工事
  • 請負代金合計100万円以上の建築物の改修作業
  • 請負代金合計100万円以上の工作物の解体・改修作業
  • 20トン以上の鋼製の船舶の解体・改修工事

2023年10月からは資格による事前調査の義務化

2023年10月1日から、建築物におけるアスベストの事前調査や分析には、専門の資格が必要となります。

アスベストの事前調査・分析を行える資格は以下の通りです。

  • 建築物石綿含有建材調査者(調査)
  • アスベスト診断士(調査)
  • 石綿分析技術評価事業(分析)

資格について詳しい内容をまとめた記事があるので、是非参考にしてみてください。

アスベストのみなし工事とは?

「みなし判定」とは、建築材料がアスベストを含むと仮定して工事を進めることです。この判定の選択方法や、注意点などを詳細記事で解説しています。ぜひ参照してみてください。

アスベスト含有の分析をせずに工事できる

通常、アスベスト含有の有無は、アスベスト分析の資格者による事前調査・分析が必要です。 しかし、みなし判定では、該当する建材をアスベスト含有として扱うことでアスベストの分析を省略することができます。

アスベストのみなし工事を選ぶと何が変わるの?

みなし判定はアスベストの分析を省略し、アスベストが含有されているものとして安全対策を行う手法ですが、引き続き遵守すべき手続きがあります。

この項では、みなし工事の選択が具体的に違いをもたらすのかを徹底的に解説していきます。

事前調査の一部が不要になる

アスベストのみなし判定を選択すると、工事の安全対策はアスベストの存在を前提に行いますが、分析作業は省略することができます。

ただし、書面による調査や報告書の作成などの手続きは必要となります。

ここで注意したいのが、みなし工事を選んでも事前調査をしなくて良いというわけではないということです。

作業時の安全対策が一番厳しくなる

アスベストは毒性・危険度によりレベル1・2・3と分類されています。レベルが下がるにつれて作業時の危険度は高くなり、より厳しい安全対策が必要になります。

アスベストのみなし工事は、アスベスト含有ありとみなした建材のレベルにそった安全対策をとらなければなりません。

アスベストのみなし工事についての勘違いについて

アスベストのみなし工事に関する一般的な勘違いは大きく分けて2つあります。

  • 書面調査、目視調査をしない
  • 報告書の作成・届け出の提出を怠る

こちらのいずれかを怠ると事前調査の結果の報告義務違反として30万円以下の罰金がかかります。

書面調査、目視調査をしない

みなし工事を選択した場合、アスベスト事前調査が不要と判断して、書面調査や目視調査を行わない場合が多いです。しかし、書面調査や目視調査はみなし判定の場合でも行わなければなりません。みなし判定の場合でも必ずこのプロセスは飛ばさないでください。

報告書の作成・届け出の提出を怠る

みなし工事を選択した際、報告書の提出を怠ると罰則の対象になります。みなし工事は最も厳しい安全対策を行うことで、従業員や周辺住民に対して安全に処理していても報告書の提出漏れだけで30万円以下の罰金が課せられる場合もあります。みなし工事の場合でもしっかりと報告しましょう。

【図解】正しいみなし工事のフロー

みなし工事の際の勘違いが起きやすいポイントなどを解説してきましたが、みなし工事の場合にどのようなフローを踏めばよいかを解説していきます。またこの項の最後に通常の事前調査の流れと比較し、みなし工事での事前調査の流れをわかりやすく図で解説していきます。

省略できるプロセスは分析調査のみ

みなし工事を行う際に省略できるのは、試料採取〜分析調査だけであると覚えてください。 重要なのは、みなし判定での工事を選択した場合でも、書面調査や現地での目視確認、そして調査結果の報告書作成が必要であるということです。

みなし工事のメリット

みなし判定をしたことによって試料採取・分析の過程が不要になる

みなし工事の場合は、試料を採取し分析調査をする過程を省略することができます。 例えば、ほとんどの確率で危険度の高いアスベストが含まれている場合など、わざわざ分析する時間もコストもかける必要がなくなります。

解体までの費用が抑えられる可能性がある

みなし工事の場合は、分析調査にかける費用3万円~7万円を削減することができますので、総合コストを抑えられる場合もあります。分析調査にかかる時間も短縮することができます。

みなし工事のデメリット

みなし工事を選択することで、本来行わなくて良い安全対策をする場合があります。その場合はコストが余計にかかってしまうこともあるので要注意が必要です。

意味がない安全対策が必要になる可能性がある

実際はアスベストが含まれていないものの、みなし工事を選択する場合、対象の建材にアスベストが含まれていると仮定します。その場合レベルにそった安全対策をしなくてはならないので、必要以上の安全対策を取ることになってしまいます。

費用がかさむ可能性がある

レベル1やレベル2のアスベストないし、アスベストが含まれていない場合でも、みなし工事をしてしまうと、余分な安全対策が必要になる可能性があります。

結果的にアスベスト処理〜廃棄までのコストがかさむ可能性があります。

事前にどのレベルのアスベストがどれくらいの確率で含まれているかを試算することが大切です。

どんなときにみなし工事を選択するべきなのか

みなし工事のメリットやデメリットを解説してきましたが、実際どのようなときはみなし工事を選択するのか?と疑問に思われた方もいると思います。 みなし工事を選択するべき3つのポイントを解説していきます。

1. 再資源化する予定がない

解体工事の際に壊した建材を再び資源として利用することがありますが、再資源化をする際にはアスベスト非含有の証明が必要になります。 再資源化をせず、廃棄を前提であればみなし工事を選択する可能性が出てきます。

2. アスベスト含有の可能性が高い

みなし判定をして工事をする際に一番重要なポイントです。もしアスベストが含まれていない場合、アスベスト事前調査からの解体・改修工事までの金額はあがってしまうでしょう。

しかし、アスベストを含有する建材の場合は、事前調査費用の分析調査にかかる時間とコストを省略することができます。

みなし工事をする際には、年代・建材の種類・設計図書等でアスベストがどれだけの可能性で含まれているかをしっかり見極める必要があります。

3. 事前調査のための試料採取が難しい

試料採取は、建材の一部を採る必要がありますが、試料採取が安全に行えない可能性がある場所の場合は、みなし工事を選択するしかないこともあります。そういった際は、アスベスト事前調査の専門家と相談しながら進めていきましょう。

そもそもアスベストの事前調査を行わなくていい場合も!

みなし工事の場合、様々な工事の過程が省略できないことがわかってきたところで、そもそもアスベストの事前調査自体を行わなくても良い場合が例外的にあります。この項ではどういうときがその例外に該当するのかについて解説していきます。

1. アスベスト含有の可能性がない場合

木材、金属、石、ガラスなどから成る建材を扱う工事では、これらの素材にアスベストが含まれていないことが明らかであるため、通常の事前調査は必要ありません。

こういった工事の際も、その周辺にアスベストを含む可能性がある建材があり、そのような建材を損傷する可能性があるときは事前調査の対象になります。

2. アスベストの粉じんを吸引するリスクが著しく低い場合

釘打ちや釘抜きなどのアスベストがたとえ含まれていたしても、ほとんど建材に対して損傷がなく、 作業員や周辺住民のアスベストの粉じんを吸引可能性が著しく低い場合は、アスベストの事前調査を行う必要はありません。

この工事もドリルなどを使って穴を開ける場合などは、事前調査が必要です。

まとめ

以上、今回は行政指導が2000件も入った元凶でもあるアスベストのみなし工事についていかがだったでしょうか?

この記事では、アスベストのみなし工事について理解が深まったと思います。アスベスト事前調査の義務化やみなし工事の選択肢、そしてみなし工事のメリットとデメリットについても紹介しました。

アスベストの取り扱いには十分な対策と知識が必要です。安全性と健康を確保するためにも、アスベストに関わる工事や改修には専門家の助言を仰ぐことをおすすめします。

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この記事の執筆者

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アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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