甚大な健康被害のリスクのある「アスベスト(石綿)」は、建築基準法や建築リサイクル法、大気汚染防止法、廃棄物処理法など、さまざまな法律によって全面的に使用が禁止されていますが、過去に使用されたアスベストが残っている建造物も多く存在します。
そのため、アスベストが使用されている建造物を解体する必要がありますが、アスベストは使用されている建材によってレベル分けされており、レベルによって取り扱い方が異なるのです。
とはいえ、アスベストのレベルがどのようなものなのか、レベルに応じてどのように取り扱うべきなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、アスベストレベルの概要や一覧、レベルによる取り扱いの違いなどについて詳しく解説します。 アスベストのレベルごとの特徴や違いについての一覧表をチェックしたいという方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
アスベストのレベルとは?
天然鉱石であるアスベストは耐熱性や対摩擦性に優れていることから建材としてさまざまな部分に用いられてきましたが、1970年代に健康被害があることが確認されたことをきっかけに使用が記載され、2006年にはアスベストは全面的に使用が禁止されました。
アスベストの健康被害は非常に危険であることが分かり、その危険性によって1〜3までのレベルに分けられたのです。
ここでは、アスベストのレベルの概要や判定方法などについて詳しく解説します。
アスベストのレベルは、発じん性のリスクを表している
アスベストの健康被害としては、空気中に飛散するアスベストを人が吸い込んでしまったときに肺胞に沈着し肺のなかに長く滞留することによる、肺がんや悪性中皮腫などの病気が発生する可能性があると言われています。(参照:茨城県「アスベストによる健康被害について」)
アスベストを吸い込んでしまうリスク、つまり発じん性のリスクの高さをレベルによって分類しており、レベル1がもっとも健康被害のリスクが高く、レベル3が比較的健康リスクが低いアスベストとなります。
とはいえ、アスベストレベル3であっても、解体作業時や物が触れてしまったときなどの衝撃が加えられたときにはアスベストが飛散する可能性があるため、安全とは言い切れません。
アスベストのレベルの判定方法は?
アスベストのレベルは、粉じんの飛散しやすさを表す「粉じん性」によって判定されます。
粉じん性は大気汚染防止法の区分によって定められているため、使用されているアスベスト製品によってレベルが判定されることが多いです。
ただし、アスベストの劣化によっても粉じん性は異なり、劣化が見られる場合や毛羽立ちが見られる場合は劣化が進んでいるため、解体業者に調査してもらう必要があります。
アスベストのレベル一覧
ここでは、アスベストの1〜3のレベルの概要と主に使用されていた年代について詳しく解説します。
アスベストレベルによって、特徴や危険性は大きく異なるため、どのようなアスベストが危険なのかをあらかじめ押さえておくといいでしょう。
アスベストレベル1:最も粉じん発生リスクが高い
アスベストレベル1は、非常に発じん性が高く、もっとも健康被害のリスクが高いアスベストとして認定されています。
レベル1のアスベストは見た目がモコモコとしており、いかにも飛散しそうな見た目をしています。
少しの衝撃でも飛散する恐れがあるため、解体作業においては広域に飛散する可能性が高く、しっかりとした対策が必要です。
主に使用されていた年代
建築基準法の耐火建築物においては1963年ごろ〜1975年はじめごろまでの建築物にアスベストが多く見られ、エレベーター周りについては1988年ごろまで石綿含有吹付け材が使用されているケースもあります。
ビルの機械室、ボイラー室等の天井、壁またはビル以外の建築物においては、1956年ごろ〜1975年はじめごろの建造物に多く使用されています。
アスベストレベル2:粉じん発生に注意が必要
アスベストレベル2は、レベル1に比べると発じん性は低いですが、撤去作業時にはレベル1と同等のばく露対策が求められるため注意が必要です。
また、レベル2のアスベストは密度が低いため、崩れてしまうと一気にアスベストが飛散する可能性が高いことも押さえておくといいでしょう。
主に使用されていた年代
アスベストレベル2の建材は、〜2004年ごろまで使用されていました。
石綿含有の保温材は1980年まで使用されており、耐火被覆や断熱材の一部は1989年ごろまで使用されています。
また、断熱材の中でも煙突用石綿断熱材は2004年まで使用されていたという報告があります。
アスベストレベル3:低リスクでの取り外しが可能
アスベストレベル3は、比較的発じん性が低いため、低リスクでの取り外しが可能です。
ただし、アスベストが含有されている建材が破損した場合や解体作業中にはアスベストが飛散する可能性があります。
主に使用されていた年代
アスベストレベル3の建材は、〜2004年まで使用されていました。
石綿含有スレートボードや石綿含有スレート波板などは1931年ごろから2004年まで長期にわたって使用されており、その他の建材についても、レベル1.2に比べると2000年代まで使用されてた建材が多くなっています。
アスベストのレベル一覧表
アスベストのレベル一覧表は以下の通りです。
レベル | 大気汚染防止法の区分 | アスベスト含有建材の例 | 具体的な使用箇所の例 |
---|---|---|---|
レベル1 | 吹付け石綿 | 吹付けアスベスト | 建築基準法の耐火建築物(3階建以上の鉄筋構造の建 築 物、床面積の 合計が200m2以上の鉄筋構造の建築物等)などのはり、柱などに、石綿とセメント合剤を吹付けて所定の被膜を形成させ、耐火被膜用として使われている。 ビルの機械室、ボイラ室等の天井、壁またはビル以外の建築物(体育館、講堂、温泉の建物、工場、学校等)の天井、壁に、石綿とセメントの合剤を吹き付けて所定の被膜を形成させ、吸音結露防止(断熱用)として使われている。 |
乾式吹付けアスベスト | |||
半乾式吹付けアスベスト | |||
湿式吹付けアスベスト | |||
軽量塗材(吹付けバーミキュライト(ひる石)) | |||
軽量塗材(吹付けパーライト) | |||
レベル2 | 石綿含有断熱材 | 煙突用断熱材 | ボイラ本体及びその配管、空調ダクト等の保温材として、石綿保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材等を張り付けている。 建築物の柱、はり、壁等に耐火被覆材として、石綿耐火被覆板、石綿含有けい酸カルシウム板第二種を張り付けている。断熱材として、屋根用折版裏断熱材、煙突用断熱材を使用している。 |
屋根用折板断熱材 | |||
石綿含有保温材 | 石綿保温材(配管等保温材) | ||
けいそう土保温材 | |||
パーライト保温材 | |||
石綿含有けい酸カルシウム保温材 | |||
不定形保温材 (水練り保温材) | |||
石綿含有耐火被覆材 | けい酸カルシウム板第2種 | ||
耐火被覆板 | |||
レベル3 | 石綿含有仕上塗材 | 薄塗材C(セメントリシン) | 建築物の天井、壁、床などに石綿含有成形板、ビニル床タイル等を張り付けている。屋根材として石綿スレート等を用いている。 |
内装薄塗材E(じゅらく) | |||
厚塗材C(セメントスタッコ) | |||
石綿含有成型板等 | けい酸カルシウム板第1種 | ||
建築用下地調整塗材 | |||
ビニル床タイル | |||
スレート波板(石綿スレート) | |||
住宅屋根用化粧スレート | |||
押出成形セメント板 | |||
窯業系サイディング | |||
パルプセメント板 | |||
スラグせっこう板 | |||
フロー材 | |||
ロックウール吸音天井板 | |||
石膏板(ボード) | |||
石綿円筒 |
それぞれのレベルの建材について、以下で詳しく解説します。
石綿含有吹付け材:レベル1
石綿含有吹付け材の具体的な建材は以下の通りです。
- 吹付けアスベスト
- 乾式吹付けアスベスト
- 半乾式吹付けアスベスト
- 湿式吹付けアスベスト
- 軽量塗材(吹付けバーミキュライト(ひる石))
- 軽量塗剤(吹付けパーライト)
石綿含有吹付け材は、アスベストとセメントに水を加えて混合し、それを吹きつけて施工するものですが、発じん性がもっとも高く、一般的な”アスベストのイメージ”がレベル1の石綿含有吹付け材と言っても差し支え無いでしょう。
石綿含有吹付け材のアスベスト含有量は60%〜70%ほどでしたが、1975年に吹きつけアスベストの使用が原則禁止になりましたが、現在においても建造物の内部に使用されている可能性が危惧されています。
石綿含有断熱材:レベル2
石綿含有断熱材の具体的な建材は以下の通りです。
- 煙突用断熱材
- 屋根用折板断熱材
アスベストは耐火性・断熱性・防音性にも優れていたため、断熱材としても使用されることが多く、駐車場や体育館などでも使用されていました。
石綿含有断熱材の製品としては、フェルトンやブルーフェルトン、レアフォームなどがありますが、なかでもフェルトンはアスベスト含有量が90%となっているため、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。
石綿含有保温材:レベル2
石綿含有保温材の具体的な建材は以下の通りです。
- 石綿保温材(配管等保温材)
- けいそう土保温材
- パーライト保温材
- 石綿含有けい酸カルシウム保温材
- 不定形保温材(水練り保温材)
石綿含有保温材は、配管に使用されることも多く、配管の直線部ではグラスウール保温材やロックウール保温材が使用され、エルボー部分などには不定形保温材(水練り保温材)が使用されることが多いです。
他には、ダクトや機械類の保温や保冷に使用される事例が多くなっています。
石綿含有耐火被覆材:レベル2
石綿含有耐火被覆材の具体的な建材は以下の通りです。
- けい酸カルシウム板第2種
- 耐火被覆板
石綿含有耐火被覆材は、主に鉄骨造の建造物の”はり”や”柱”に使用される耐火被覆用の板材です。
けい酸カルシウム板第2種のアスベスト含有量は30%以下であるのに対し、耐火被覆板のアスベスト含有量は70%以下というように、含有量に大きな違いがあります。
石綿含有仕上塗材:レベル3
石綿含有仕上塗材の具体的な建材は以下の通りです。
- 薄塗材C(セメントリシン)
- 内装薄塗材E(じゅらく)
- 厚塗材C(セメントスタッコ)
石綿含有仕上塗材とは、アスベスト含有量が0.1%を超える建築用の仕上げ塗料のことを指します。
全体を見てみてもアスベスト含有量が数%であることが多く、比較的発じんも低いです。
石綿含有成形板等:レベル3
石綿含有成形板等の具体的な建材は以下の通りです。
- けい酸カルシウム板第1種
- 建築用下地調整塗材
- ビニル床タイル
- スレート波板(石綿スレート)
- 住宅屋根用化粧スレート
- 押出成形セメント板
- 窯業系サイディング
- パルプセメント板
- スラグせっこう板
- フロー材
- ロックウール吸音天井板
- 石膏板(ボード)
- 石綿円筒
石綿含有成形板は、セメントなどと一緒に形成されるアスベスト含有の成形板です。
一般住宅においても、外壁や内壁、天井、床などで幅広く使用されています。 また、石綿含有成形板は吸音材などと2層になっていることもあるため、周辺のアスベスト含有建材にも気をつける必要があります。
レベルによるアスベストの取り扱いの違い
ここでは、レベルによるアスベストの取り扱いの違いについて解説します。
アスベストのレベルによって、解体作業時に必要な提出書類や対策の方法も異なります。
また、費用相場や補助金についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
工事や作業に必要な手続き
アスベストを含む建造物を解体するとき、「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者による事前調査が令和5年10月1日より義務付けられています。
事前調査では、図面による調査と現地による調査を行い、解体を発注した側に報告を行うことが一般的です。
事前調査によってアスベスト含有量およびレベルを判断し、必要書類とともに各都道府県に届出を行います。
アスベストレベルと必要書類については以下の表を参考にしてください。
工事計画届出書 | 特定粉じん排出等作業実施届出書 | 建築物解体等作業届 | 事前届出の実施 | |
---|---|---|---|---|
レベル1 | 必要 | 必要 | 必要 | 必要 |
レベル2 | 必要 | 必要(エルボ(配管保温材)の非石綿部の切断工法では不要) | 必要 | 必要 |
レベル3 | 不要 | 不要 | 不要 | 必要 |
各種届出の提出先としては、「工事計画届出書」と「建築物解体等作業届」は所管の労働基準監督所長、「特定粉じん排出等作業実施届出書」と「事前届出の実施」は各都道府県知事となります。
それ以外でも市区町村の条例での届出が必要がある場合もあるので注意が必要です。
詳しくは工事の対象となる自治体にお問い合わせください。
解体作業に必要な対策
アスベストを含む建造物を解体する場合、周囲に「ばく露防止対策等の実施内容の掲示」という告知をする必要があります。(参照:厚生労働省「建築物等の解体作業等における石綿のばく露防止対策等の掲示について」)
また、解体時はアスベストが飛散しないように飛散防止剤を撒くことや、人体に影響がないように防護メガネや防護服を着るなどの対策も必要です。
専用の袋に入れて、特別管理産業廃棄物として処分します。
除去に必要な費用の相場
厚生労働省が2007年1月〜2007年12月におけるアスベスト除去の成功実績データによって算出した費用相場は以下の表の通りです。
アスベスト処理面積 | 除去費用 |
300m2以下 | 2.0万円/m2 ~ 8.5万円/m2 |
300m2~1,000m2 | 1.5万円/m2 ~ 4.5万円/m2 |
1,000m2以上 | 1.0万円/m2 ~ 3.0万円/m2 |
依頼する業者によって費用に違いがあることはもちろん、除去する面積によっても費用相場が異なりますが、アスベストレベルによる撤去費用自体に大きな違いはありません。
また、”吹付けアスベスト等が施工されているおそれのある住宅・建築物”を対象として厚生労働省はアスベスト除去の補助金制度を設けており、原則として25万円/棟の限度額の補助金を申請することが可能です。
ほかにも、国土交通省による補助金や、地方公共団体によって独自に定められた補助金制度を活用できる場合もあります。
まとめと一覧表
本記事では、アスベストレベルの概要や一覧、レベルによる取り扱いの違いなどについて詳しく解説しました。
このように、アスベストは含有量や粉じん性などによってレベルが分けられており、現在の建造物においても残っている可能性があります。
アスベストは飛散すると大変危険ですので、解体時には事前調査や丁寧な対策など、細心の注意を払って行う必要があり、レベル1のアスベストを含む解体作業の場合は提出書類も多くなります。
また、費用に関しては政府や自治体などから補助金を申請することもできるため、適用されるのかを確認してみるといいでしょう。
ぜひ本記事を参考にしてアスベストのレベル一覧について確認してみてください。
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