アスベストのレベル3は届出が必要?法改正・作業手順・みなし工事について解説

アスベストについて調べたり、調査の依頼を検討された方は、アスベストのレベルについて聞いたことがある方も多いはずです。

特に、アスベストのレベル3については、近年新しく規制が定められたり、分類が変わったりと、すべて把握するのは難しい状況です。

この記事では、アスベストのレベル3についてわかりやすくまとめています。この記事を読めば、レベルの違いで工事や調査にどのような違いが生じるのか、わかるようになります。

目次

アスベストのレベルについて解説

まずは、元となるアスベストのレベルを用いた分類について解説していきます。

アスベストは空気中に浮遊しやすく、吸い込むと体内に滞留し、肺がん・悪性中皮腫などの病気を引き起こす可能性があります。

このような健康被害のリスクの大きさから、アスベストをレベル分けし、それぞれのレベルに適切な基準を設けて処理することが進められていました。

分類について

アスベストの建材は、作業の際に粉じんが舞う危険性にあわせて、レベルが決められています。

レベル1が除去の際に粉じんが舞いやすく、最も危険な建材となります。

レベル1
  • 吹付け石綿
レベル2
  • 石綿含有保温材
  • 石綿含有断熱材
  • 石綿含有耐火被覆材
レベル3
  • 石綿含有形成板等
  • 石綿含有仕上塗材

レベルによって解体費用が変動し、一般的には危険度が高いものほど高額になるケースが多いです。

法改正について

近年、アスベストの作業が適切に行われていないケースや、見落としなどが続出したことから、アスベスト関連の法改正が行われてきました。

特に、アスベスト建材のレベルについては、規制対象となっていないレベル3建材の不適切な除去により、石綿が飛散してしまうことが指摘されていました。

そこで、2021年4月から、すべてのレベルの建材について作業基準を定める法改正が施行されることになります。

引用:大気汚染防止法及び政省令の改正について環境省

作業基準の違い

レベル1・2の建材は、解体工事してしまうと大量のアスベストが飛散する危険性があり、解体よりも先にアスベスト撤去作業が必要となります。

解体を伴わない工事の場合は、封じ込め工法や、囲い込み工法によって撤去をしなくても良い場合があります。

一方、レベル3の建材は固く割れにくい建材のため、取り除く際のリスクが低いことが特徴です。解体時に注意が必要なことはレベル1・2の建材と変わりませんが、作業員が使用する保護具が簡易的なものでも良い、など比較的基準が優しい点が特徴です。

アスベストのレベル3の基本情報

ここまで、アスベストのレベルによる分類について見てきました。では、比較的基準が優しいとされる、レベル3の建材とはどのようなものなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

レベル3のアスベスト含有建材の種類

レベル3に設定されているアスベスト建材は、以下の2つです。

  • 石綿含有成形板等
  • 石綿含有仕上げ塗材

石綿含有成形板は、セメント等とともに成形された石綿含有建材です。主に建築物の屋根・外壁・内壁・天井・床などの材料として幅広く使用されています。

石綿含有仕上塗材は、建物の内壁・外壁の表面に、ローラーやコテで塗られる、凹凸模様やゆず肌などに仕上がる材料です。

どちらも、撤去の際のリスクは比較的小さいといえます。

アスベストのレベル3の届出について

アスベストのレベル3の場合、届出が必要となる可能性があるのは、「事前調査結果報告書」になります。

事前調査結果を報告する義務があるかどうかは、工事の規模が一定以上であるかによって判断することになります。

以下のフローチャートを参考にしてください。

アスベストのレベル3に対する法改正について

アスベストについては、近年多くの法改正が施行されており、レベル3という基準にも変化がありました。

まず、石綿含有仕上塗材は令和3年4月からレベル3相当の建材として取り扱うことが決まりました。

さらに、同時期からすべてのレベルの建材について、事前調査結果の記録の作成・保存が義務付けられます。

以下の記事は、法改正について詳しくまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

アスベストレベル3の作業基準について

アスベストのレベル3についての特徴について、ここまで見てきました。より詳しく理解したい方のために、アスベスト工事の作業基準についてご紹介致します。

石綿含有成形板の作業基準
  • 切断や裁断をせず、手ばらしで取り外すこと
  • 手ばらしが難しいときは、対象建材を薬液等で湿潤化してから除去すること
  • ケイ酸カルシウム板第1種を手ばらしせずに除去する場合は、湿潤化に加え、周辺の養生をすること
石綿含有仕上塗材の作業基準
  • 対象建材を薬液等で湿潤化してから除去してください。
  • 電気グラインダー等の電動工具で除去する場合は、湿潤化に加えて周辺の隔離養生も必要です。

以上は大気汚染防止法による作業基準のため、各自治体が定める作業基準もあることに注意して、作業を行うようにしてください。

レベル3のアスベスト工事の作業手順

では、実際の作業はどのような手順で行われるのでしょうか?ここでは、石綿含有成形板を除去するときの手順を例にあげて見ていきたいと思います。

STEP
解体作業場を養生

外装の工事:解体建物の周囲をパネルやシート等の養生材により囲います。

内装の工事:窓の開口部をテープで目張りし、プラスチックシート等で隙間を塞きます。

STEP
湿潤化

石綿含有成形板等に、散水・噴霧をして湿潤化します。屋根等では、作業者の転落等の危険性があるので、止め付け部分のみ湿潤化する等の工夫をします。

STEP
除去作業

石綿が飛散しないように、手作業によりできるだけ原型のまま取り外します。

STEP
後片付け

取り外した材料は原則として湿潤化し、破損しないよう丁寧に扱う。

作業場を高性能真空掃除にて清掃を行う。

参考:レベル3建材除去等作業時の石綿飛散防止|環境省

コア抜き・ビス止め等の軽微な作業について

ここまでレベル3アスベストの工事の基準について見てきましたが、壁にリモコンを固定するため壁に釘を打つ、などの非常に軽微な作業も、事前調査や記録の作成が必要なのでしょうか?

この疑問については、厚生労働省からの発表が出ています。

「釘を打って固定する、又は刺さっている釘を抜く等、材料に、石綿が飛散する可能性がほとんど無いと考えられる極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業」については、事前調査が必要ない

令和2年8月4日厚生労働省通知より

という結果でした。

しかし、同時に

「なお、電動工具等を用いて、石綿等が使用されている可能性がある壁面等に穴を開ける作業は、これには該当せず、事前調査を行う必要があること。」

令和2年8月4日厚生労働省通知より

とも記されています。

つまり、電動工具を用いるかどうかを基準として判断するということです。

参考:令和2年8月4日厚生労働省通知

アスベストのレベル3建材の見分け方

では、レベル3建材の見分け方にはどのような方法があるのでしょうか?

レベル3の建材は、石綿含有形成板・石綿含有仕上塗材です。

法改正により、現在はすべての工事においてアスベスト事前調査が原則必須となっています。

そのため基本的には

  • アスベスト含有の調査をする
  • アスベストありとみなして工事をする

のどちらかの選択肢を取ることになります。

調査分析

アスベストが建材に含まれているかどうか、判別する方法として最も一般的なのは、事前調査を資格者を有する専門機関に依頼することです。

建材にアスベストが含まれていない場合は、アスベストの対策としてかかる費用は調査費用のみとなり、最も時間と費用を抑えられるでしょう。

みなし工事

もう一つの方法としては、建材にアスベストが含まれるとみなして工事を行うことです。

解体・改修工事の前のアスベスト事前調査は、すべての工事において原則必須となったため、必ず調査をする必要があります。

しかし、建材にアスベストが含まれる可能性が非常に高い場合は、建材にアスベストが含まれている前提で工事を始めることができます。

調査費用をかけることなく工事に進むことができ、調査の期間も短縮する事ができます。

アスベストのレベル3のみなし工事

前の章で、調査分析と同じく見分けるための方法として挙げられていたのが「みなし工事」です。このみなし工事について、詳しく見ていきましょう。

みなし工事とは?

みなし工事とは、建材にアスベストが含まれているとみなして工事を行うことです。みなし工事の場合、調査の専門機関に分析を依頼することなく工事をすることができます。

ただし、建材にアスベストが含まれている場合、対象となる建材の取り扱いには非常に注意が必要となり、料金も費用もアスベストが含まれていない場合よりもコストがかかってしまいます。

みなし工事と分析の違い

みなし工事について見てきましたが、調査分析を行う場合とみなし工事ではどのような違いがあるのでしょうか?

主に異なるのは金額面です。

みなし工事では、建材からアスベストが検出される前提で工事を進めることになります。

調査費用をカットすることができますが、その反面、工事の費用はアスベストを含まない建築物の工事よりも高くなります。

アスベストの取り扱いには資格や専門知識が必要なため、より費用がかかる、というわけです。

みなし工事を行うかどうかで費用効率が変わるため、注意が必要です。

調査をした場合と、みなし工事をした場合の費用効率について、図にまとめました。

アスベストが含まれていることが確実でない場合は、調査を行ったほうが費用効率が良いことが分かります。

アスベストの除去業者として長年の経験があるアスネットのデータによると、調査を行った場合のアスベスト含有の割合は以下のようになっています。

  • アスベスト含有 …約20%
  • アスベスト非含有約80%

アスベスト非含有の確率が高いことが分かりますね。

建材にアスベストが含まれているかお悩みの方は、調査を依頼することをおすすめいたします。

みなし工事のメリット

みなし工事をすることのメリットは、建材にアスベストが含まれるかどうかを調査分析する必要が無いため、その分の費用が削減できることです。

確実に含有する場合は調査費用が必要ない

みなし工事のデメリット

みなし工事をすることのデメリットは、アスベスト除去・処理のための費用が必ずかかるということです。

含まれるとみなしたアスベスト建材に対して必要となる可能性がある措置のうち、最も厳しい措置をを講じる必要があります。

調査をしてアスベストが含まれなかった場合、もしくは厳しい措置が必要ない建材であることがわかった場合と比較すると、工事・処理費用は一番高くなります。

調査をした場合を比較して費用が余分にかかる可能性がある。

アスベストのレベル3のみなし工事費用について

アスベストのみなし工事について、ここまで見てきました。では、具体的にみなし工事の費用はどれくらいになるのでしょうか?

実際の工事費用

国土交通省が2007年の施工実績データから算出した除去単価は以下の通りとなっています。

アスベスト処理面積除去費用
300㎡以下2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡
300㎡ ~ 1000㎡1.5万円/㎡ ~ 4.5万円/㎡
1000㎡以上1.0万円/㎡ ~ 3.0万円/㎡

古いデータですので、あくまで参考程度にお考えください。

処理面積が小さいほど、費用の幅は大きくなります。

調査費用との比較

対して、アスベストの調査費用の相場は、10~100万円とされています。

建築物の規模が大きくなればなるほど、費用は高くなります。

規模が大きい工事ほど、みなし工事をする事によって調査費用をカットすることは重要だと言えます。

調査費用については、以下の記事でまとめていますので、合わせて御覧ください。

一番費用が抑えられるのは調査をしてアスベストが出ない場合

調査費用と工事費用を比較すると、やはり工事費用のほうが高いため、調査をすることによってアスベストが出ない場合が一番費用を抑えられます。

助成金利用について

アスベストの正しい処理を普及するべく、法改正と併せて、各省庁や自治体から様々な補助金が出ています。

補助金を活用して、適正な調査を行う業者への依頼をすることができるので、対象となる自治体のホームページなどを確認することをおすすめします。

以下はその一例です。

新宿区:アスベストの含有調査において最大で25万円の補助が受けられます。

参考:建築物のアスベスト対策の費用を助成します!:新宿区

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まとめ

アスベストのレベル3について、法改正、作業手順、みなし工事などを解説してきました。

アスベストのレベル3は、石綿含有成形板と石綿含有仕上塗材を指し、これらの建材は法改正により事前調査が必須となりました。しかし、アスベストが含まれるとみなして工事を行う「みなし工事」も可能です。

みなし工事は調査費用を削減できますが、アスベスト含有の可能性が低い場合、結果的に工事費用が高く付くこともあります。

また、アスベストの除去・処理には補助金が利用できることがあるため、対象の建築物の自治体に相談し、適切な制度を利用して調査・工事を進めることをおすすめします。

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この記事の執筆者

アスベストナビ編集部のアバター
アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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