現在、アスベストは深刻な健康被害を引き起こしているために規制が年々厳しくなっています。そのため、建築物の解体や改修の際には、アスベストを含む可能性がある建材に対する事前調査がほとんどのケースで必須とされています。
しかし、すべての状況でアスベストの事前調査が求められるわけではありません。一部の特定のケースでは、この調査を省略できることが法律(大気汚染防止法)によって定められています。
この記事では、アスベストの事前調査が例外的に不要とされる状況やその際の注意点について詳しく解説していきます。
なぜアスベストの事前調査は義務化になったのか?
アスベスト事前調査が義務化となった背景
アスベストは、かつて建築材料として広範に利用されていましたが、その粉じんを吸入することにより肺がんや中皮腫などの重大な健康障害を引き起こす可能性があることが明らかになりました。
このため、平成18年(2006年)9月1日からアスベストやその含有製品の使用が全面的に禁止されました。
平成17年(2005年)に施行された「石綿障害予防規則(厚生労働省令第21号)」に基づいて、平成17年(2005年)以降、は建築物の解体や改修作業においては、アスベスト含有建材の使用有無に関する事前調査が義務化されました。
アスベスト事前調査〜報告が義務化になる法改正の流れ
アスベストはかつて建築材料として広く使われていましたが、肺がんや中皮腫などの健康リスクがあることが分かったため、2006年から日本でその使用が禁止されました。
以下は、2005年以降の法改正をわかりやすくまとめた図なので、ぜひご覧下さい。
アスベストの事前調査をしないとどうなる?
アスベスト関連の事前調査・報告を適切に行わない場合や違法な除去作業を行う場合、法的な制裁が科せられます。
大気汚染防止法に基づき、事前調査の報告を怠った場合、最大30万円の罰金が課せられ、アスベスト除去作業などにおける措置義務に違反した場合は、3ヶ月以下の懲役刑または30万円以下の罰金が科せられることになっています。
アスベストの事前調査が不要なケース
ここまで、アスベスト事前調査の重要性とその背景や罰則について、詳しく解説しました。アスベスト事前調査は、ほとんどのケースで必須ですが、特定の状況下では、調査を省略することができます。
ここでは、そのような例外的に事前調査が省略できるとされる条件は大きく分けて4つあります。
- 工事対象の建材がアスベストを明らかに含まない素材のみに場合
- 建材にほとんど損傷を与えずアスベストの飛散リスクがない場合
- 塗装や材料の取り付けのみを行う場合
- 平成18年(2006年)9月1日以降に着工された建築物などの場合
1. 工事対象の建材がアスベストを明らかに含まない素材のみの場合
特定の建築材料については、その性質上アスベストを含んでいないことが自明とされています。このような材料を用いた工事では、アスベストの事前調査は不要です。
具体的には、木材や金属、石、ガラスといった素材から成る建材が該当します。同様に、畳や電球の取り扱いに際しても、アスベストを含まないため、事前調査の必要はありません。
ただし、除去作業中に隣接する建材への損傷の可能性がない場合に限ります。たとえアスベストが含まれない素材であっても、周囲の損傷リスクがある場合は、事前調査は義務となります。
2. 建材にほとんど損傷を与えずアスベストの飛散リスクがない場合
アスベストの飛散リスクが非常に低い、軽微な損傷を伴う作業の場合、アスベストの事前調査は不要です。これには、単純な釘抜き作業や、簡易な釘打ち工程などが含まれます。
ただし、電動工具を使用して材料に穴を開けるような場合には適用されません。このような作業は、アスベストの飛散リスクを高める可能性があるため、事前の調査が必須となります。
3. 塗装や材料の取り付けのみを行う場合
既存の塗装の上に新たに塗料を塗るような作業のみの場合、現存する材料を除去せずに、新たな材料を上から追加するだけなので、アスベストの事前調査は必要ありません。
4. 平成18年(2006年)9月1日以降に着工された建築物などの場合
2006年(平成18年)9月1日以後に建てられた建物については、設計図などで着工日が2006年(平成18年)9月1日以後であると証拠が書面である場合に限り、アスベストの事前の目視による調査の必要はありません。
これは、アスベスト及び関連製品の製造や使用が日本で2006年9月から禁止されているためです。(ガスケットまたはグランドパッキンの場合の確認する着工日は調査不要が認められる期間が異なるので、自治体にご確認ください)
【注意】アスベストの調査が不要でも報告義務は必要な場合も!
上記にアスベストの調査が不要な場合をまとめましたが、調査自体は不要でも、報告義務は必須の場合もあります。以下の表に調査、報告がどの場合が必要でどの場合が不要かをまとめました。
アスベストの事前調査が必要な場合とは?
アスベスト事前調査が例外的に省略できる場合を解説してきましたが、逆にどのような場合は事前調査が義務となっているでしょうか?
ほとんどすべての工事に調査義務がある
大気汚染防止法に則り、建築物等の解体・改造・補修におけるアスベストの事前調査は原則としてすべて調査から報告までを行う必要があります。
アスベストの事前調査の方法について
アスベストの事前調査では、専門家が建築物の建材を分析し、アスベストの有無を確認します。
以下で基本的な流れを解説します。
アスベスト事前調査の基本的な流れ
アスベスト事前調査では、建材サンプルの採取と詳細な検査が行われ、リスクの評価と報告が必要です。
アスベストの事前調査から報告までのフローは以下のようになっています。
建築物のオーナーなどから調査依頼が来た際に、事前調査をするための情報をもらい、調査計画を立てます。
図面を確認後、改修履歴の記載の確認。試料採取が必要な場合は、採取予定場所を決定します。
目視で建築物の把握や、試料採取予定場所を確認し、現地調査票を作成します。
1~3の工程で得た情報からアスベストの含有の可能性を判断します。
試料採取計画をたて、試料を採取します。
試料にアスベストが含まれているかを分析します。
【番外編】アスベストみなし判定について
アスベストみなし判定とは?
建築材料に含まれるアスベストの有無について確定的な判断を下すためには、専門の機関による分析が必須です。
しかし、そのような分析を実施せずに、該当の材料をアスベストを含むものとみなし、扱う方法もあります。これは「みなし判定」と呼ばれています。
具体的には、厚生労働省が定める関連法規において、「みなし判定」を利用することが認められており、これにより、材料がアスベストを含むと見なされた場合には、分析調査を行うことなく、適切な安全対策や健康保護の措置を施すことで、作業を進めることができます。
“みなし判定”で工事を進める際の注意点
みなし判定は、建築材料に含まれるアスベストの分析をスキップする選択肢として存在しますが、この判定が他の手続きの省略を許可するわけではありません。
たとえば、書面による調査や現場での目視による確認、さらにはその結果をまとめた報告書の作成や提出といった工程は、みなし判定を行ったとしても省略できません。
実際のケースとして、工事を始める前に調査結果報告書を作成せず、その報告書を工事現場に設置していない例がありますが、このような状況は問題です。
みなし判定を採用した場合でも、関連する報告書の作成は義務付けられています。この報告を怠ると、作業を行う側に十分な情報が提供されていないと見なされます。
このような状況は、行政指導や罰則の対象となる可能性があるため、注意が必要です。
【図解】アスベスト事前調査が不要な場合のまとめ
以上、アスベスト事前調査が不要なケースについて徹底解説する記事でした。アスベストの事前調査が必要な背景や罰則、調査が不要なケースについておわかりいただけたでしょうか?
他の記事では、アスベストの事前調査が必要な場合や調査の方法についても説明しています。 ぜひその他の記事もご覧ください!
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