アスベストによる健康被害は労災認定されるの?
アスベストによる健康被害は、特定の条件を満たす場合に労災認定されます。
アスベストはかつて建築材料などに広く使われていました。
しかし現在では、長期間にわたるばく露は肺がんや中皮腫などの重大な健康問題を引き起こすことが判明しています。
これらの病気は発症までに長い潜伏期間があり、病気と職場でのアスベストばく露との因果関係を証明することが労災認定の鍵となるのです。
アスベスト労災保険で受けられる給付の種類
アスベストによる健康被害が労災として認定された場合、以下のような給付が受けられます。
給付(補償)の種類 | 内容 |
---|---|
療養給付 | 必要な医療の給付や、その費用の支給が行われます。これには、治療費や薬剤費などが含まれます。 |
休業給付 | 被害者が療養のために仕事を休む必要がある場合、休業4日目から給付基礎日額の60%が支給されます。 |
傷病年金 | 長期にわたる療養が必要な場合、年金が支給されることがあります。 |
障害給付 | アスベストばく露により障害を負った場合、年金または一時金が支給されます。 |
介護給付 | 重度の健康被害を受け、介護が必要な場合、介護費用の支給が行われます。 |
遺族給付及び葬祭料(葬祭給付) | 労災により死亡した場合、遺族に対して年金や一時金、葬祭料が支給されます。 |
これらの給付は、被害者やその家族にとって大きな支援となります。
アスベストによる健康被害の影響を、いくらか軽減することができるでしょう。
しかし、労災認定を受ける過程は複雑であり、適切な手続きと証明が必要となります。
アスベスト労災制度の対象は?
アスベスト労災制度の対象となるためには、特定の条件を満たす必要があります。
具体的に対象となる条件は、次の3つです。
- 石綿ばく露作業に従事していたこと
- 対象疾病を発症したこと
- 疾病ごとの労災認定基準を満たすこと
石綿ばく露作業に従事していたこと
まず、労災認定を受けるためには、被害者が石綿(アスベスト)ばく露作業に従事していたことの証明が必要です。以下のような作業が例として挙げられます。
- アスベストを含む建材の製造や解体作業
- 石綿製品の取り扱い
- アスベストが多く使用されていた工場や現場での作業
これらの作業によってアスベスト繊維に長期間晒されていた証拠が必要となります。
対象疾病を発症したこと
以下の疾病は、アスベストによる指定疾病とされており、労災認定の対象となります。
- 石綿肺
- 中皮腫
- 肺がん
- 良性石綿胸水
- びまん性胸膜肥厚
これらの疾病が診断された場合、アスベストばく露との関連が疑われるため、労災認定の対象となる可能性があります。
疾病ごとの労災認定基準を満たすこと
各疾病には、労災認定を受けるための特定の基準が設定されています。
アスベストによる健康被害は、その発症までに時間がかかることが多いため、労災認定を受けるためには、過去の職歴や健康状態の詳細な記録が重要です。
適切な診断とこれらの基準に基づく評価を通じて、労災認定が判断されます。
各疾病ごとの労災認定の基準は「各疾病ごとの基準」(ページ内リンク)に記載しています。
アスベスト労災認定までの流れは?
アスベストによる健康被害が疑われる場合の、労災認定を受けるための一連の手続きを見ていきましょう。
関連する書類とともに正式な申請を行う必要があります。
申請に必要な書類は2種類有ります。
申請書類
戸籍や請求書などの、申請自体の情報を集めて送付します。
- 認定申請書
- 戸籍の記載事項を確認できる書類
- 療養手当請求書
- アンケート
医学的資料
医学的資料は、病気が勤務先のアスベストが原因であるということの根拠になる資料になります。
主治医が指定した資料があれば追加で提出することになるため、主治医によく相談しましょう。
- 診断書
- 画像検査の結果
- 病理診断書
- 検査結果など
提出された資料をもとに、医師や専門家による詳細な検証が行われ、アスベストばく露が健康被害の原因であるかを判断します。
これは疾病の種類や進行度、ばく露の程度などを評価するために重要です。
環境大臣の医学的判定を経て認定されるため、結果通知までは最大で3ヶ月ほど時間がかかります。
医学的な判定の結果を基に、労働基準監督署が労災認定の有無を判断します。
認定されると、給付の種類と額が決定され、これには
- 医療費補助
- 休業補償
- 障害補償
などが含まれます。
認定を受けた場合、給付に関する手続きが進み拠出金が交付されます。
この段階では、給付金の支払い方法やスケジュールに関する詳細が決定されます。
もし労災認定がされなかった場合、不服申立てを行うことが可能です。
労災の不支給決定通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内であれば、審査請求をすることができます。
給付基礎日額が低い場合など、決定の内容に不服がある場合も、不服審査請求ができます。
さらに、不服の申し立てが認められなかった場合は、労働保険審査会に対して再審査請求ができます。
こちらは審査請求の決定書を受け取った翌日から2ヶ月以内が期限です。
アスベスト労災認定までのチェックリスト
手続きをスムーズに進めるために必要なプロセスをまとめました。
- 勤務履歴とアスベストばく露の証拠の収集
- 医療記録と診断書の準備
- 労災申請書の正確な記入と提出
- 医学的評価のための準備
- 労災認定の決定に対するフォローアップ
- 必要に応じて不服申立ての準備
これらのステップを理解しておくことで、労災認定を受けるための手続きがスムーズに行えるでしょう。
アスベスト労災認定の条件とは?
アスベストによる健康被害が労災として認定されるための条件は、病気の種類や患者の労働背景によって異なります。
疾病についての詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
各疾病ごとの基準
アスベストに関連する健康被害としては、石綿肺、中皮腫、肺がん、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚が挙げられます。
これらの疾病に対する労災認定基準は病気ごとに異なりますが、共通して必要なのは、アスベストばく露作業に従事したことの証明です。
なお、これらの条件を満たさない場合でも、労働時の状況を総合的に考慮して労災認定がなされることがあります。
石綿肺
石綿肺はじん肺の一種であり、特定のじん肺管理区分に該当する場合に認定されます。
たとえば、「管理4」の石綿肺、または「管理2」以上の石綿肺で特定の合併症がある場合が該当します。
中皮腫
中皮腫に関しては、確定診断と石綿ばく露作業従事期間が1年以上であることが認定基準です。
中皮腫は診断が困難な病気であり、病理組織検査などが必要となることがあります。
肺がん
肺がんの場合、原発性肺がんであることや、石綿ばく露作業従事期間が10年以上であることなどが基準となります。
また、特定の胸膜プラーク所見や石綿小体の確認など、追加的な条件が設けられています。
良性石綿胸水
良性石綿胸水に関しては、胸水の原因が石綿であるとの判定は、厚生労働省本省と労働局が協議した上で行われます。
びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚の労災認定基準としては、石綿ばく露作業従事期間が3年以上、著しい呼吸機能障害、一定以上の肥厚の広がりが要求されます。
胸膜肥厚があるだけでは不十分で、一定の条件を満たす必要があります。
これらの疾病ごとの基準について不明瞭な点がある場合は、以下のような団体へ相談することも選択肢の一つです。
- 独立行政法人環境再生保全機構: アスベスト健康被害救済給付の概要
- 全国労働安全衛生センター連絡会議: アスベストによる疾病の労災認定
労災認定されない場合
労災が認定されないケース
- 疾病とアスベストとの関連が認められない場合
こちらのケースでは、アスベストを吸ったときの病変「胸膜プラーク」が確認されているので、肺がんの原因はアスベストであるという主張に対して、横浜地裁が「長年の喫煙である可能性が否定できない」と指摘した。
「石綿で肺がん」請求棄却 労災認めず、横浜地裁|yahooニュース
労災が認められない場合は審査請求ができる
アスベスト労災認定までの流れでもご紹介しましたが、労災認定がされなかった場合、不服申立てを行うことが可能です。
給付額が低いことや、内容に不服がある場合も含めて、労災の不支給決定通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内であれば、審査請求をすることができます。
不服の申し立てについても認められなかった場合は、審査請求の決定書を受け取った翌日から2ヶ月以内であれば、労働保険審査会に対して再審査請求ができます。
実際のアスベスト労災認定の事例
これらの事例を見ると、アスベストに関連する疾病の労災認定における複雑さと総合的な判断の重要性がわかります。
事例1:石綿ばく露作業歴1年未満で、中皮腫を発症した。
この事例では、被災労働者が短期間(約7か月間)造船所で石綿含有の断熱材の取り付け作業に従事していました。
長年の間、石綿ばく露作業に従事していなかったにもかかわらず、中皮腫を発症しました。
病理組織検査により「悪性胸膜中皮腫」と診断されたこと、高濃度の石綿ばく露を受けていたことを認められ、業務上の疾病として認定されました。
事例2:石綿小体の数が、肺がんの認定基準値を満たさなかった
この事例では、被災労働者が約13年間石綿含有ブレーキライニングの製造作業に従事しました。
肺がん発症後、肺組織から石綿小体が検出されましたが、認定基準の数には満たない量でした。
しかし、高濃度の石綿ばく露を受けていたことと、検出された石綿小体数が肺がんの位置に関連している可能性があることから、肺がんは業務上の疾病として認定されました。
事例3:肺がんで死亡した労働者の医学的資料がすでに廃棄されていた
この事例では、被災労働者が約18年間石綿含有製品の製造作業に従事し、後に肺がんを発症し死亡しました。
医学的資料が廃棄されており、病状の詳細が確認できなかったにもかかわらず、長期間の石綿ばく露作業の歴史と、同一作業場での同僚の症例が考慮され、肺がんが業務上の疾病として認定されました。
このように、条件として提示されているものが不足している場合でも、その他の客観的な証拠でアスベスト作業に従事し、現在被害を受けていることを示すことができれば、業務上の疾病として認められるケースも十分存在します。
まとめ
アスベストによる健康被害は特定の条件下で労災認定され、給付が受けられます。
認定を受けるためには、アスベストばく露作業に従事した証明と特定の疾病の発症証明が必要です。
労災認定までには複雑な手続きを踏む必要があり、また、アスベスト労災認定の条件は病気の種類や労働背景により異なります。
アスベストや労災について専門的な知識がない場合、これらを総合的に判断するのは困難であるため、都道府県労働局や労働基準監督署といった適切な機関に相談することをおすすめします。
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