アスベストは長年にわたり建築材料として広く利用されてきましたが、その健康に対するリスクが明らかになって以降、その危険性を理由に使用が禁止されるようになりました。
この記事では、アスベストの危険性、人体への影響、そして私たちの日常生活におけるアスベストの存在について詳しく説明します。
アスベストの危険性や人体への影響を症状別にわかりやすくまとめました。
アスベストの危険性について
アスベストがもたらす健康リスクは、その微細な繊維が肺に深く入り込むことにより発生します。
この章では、アスベスト曝露の基礎から、その健康への影響に至るまでを掘り下げていきます。
アスベストのばく露とは?
アスベスト曝露は、アスベスト含有建材を解体・改修工事をする際に放出される微細な繊維を吸入することによって起こります。
これらの繊維は空気中に長時間留まり、呼吸を通じて体内に取り込まれます。
また、吸い込んだアスベストの一部は体の外に排出されますが、アスベスト繊維は変化しづらいので、大部分は肺に残り続けます。それが原因で、肺の病気になりやすいことがわかっています。
アスベストはいつ頃発病するのか?
アスベストに関連する疾患は、曝露から長い年月が経ったあとに発症することが多いため、診断が困難な場合があります。
例えば悪性中皮腫の潜伏期間は35年と言われています。そのため、過去にアスベスト含有可能性がある建材を加工・解体・改修したことがある方は、定期的な健康診断を行うことが厚生労働省から推奨されています。
また、現在アスベストを扱う作業員の健康診断は、事業主の義務となっています。
アスベストはどれくらいの量を吸うと危険なのか
アスベストによる健康リスクは、曝露量に比例しますが、少量の曝露であっても長期間にわたると健康被害を引き起こす可能性があります。
アスベストが原因の肺疾患におけるアスベストの吸引量はあまり関係ないという考え方もあり、どれくらい吸うと危険というものは実質的に存在しないです。
だからこそ、アスベスト含有の恐れのある建材に関しては、工事前に事前調査を行い、作業中には安全対策を行っていくことが大切です。
アスベストが使用されている場所とは
アスベストは、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性の機能に優れながら安い素材だったため、過去には断熱材、屋根材、床材など、さまざまな建築材料に使用されていました。
今日ではその使用が禁止されていますが、2006年以前の建物や設備の中にはアスベストが含まれている可能性があります。
以下は厚生労働省が出しているアスベストがよく使われている場所についての図です。ぜひ、アスベスト含有の可能性がある場所と照らし合わせて確認してください。
出典:国土交通省|目で見るアスベスト建材(第2版)
アスベストにおける人体への影響とは?
アスベストは、長年にわたり健康被害を及ぼしてきました。
微細なアスベスト繊維が肺に入り込み、残り続けることで肺疾患やがんなどの重大な健康被害を引き起こすことが知られています。
ここでは、アスベストのレベルが人体にどのような影響を与えるのか、また、アスベストと誤認されがちな物質について詳しく解説します。
アスベストのレベルと健康被害について
アスベストへの長期間にわたる高濃度の曝露は、アスベスト関連疾患のリスクを高めます。
レベルは発じん性により、レベル1、レベル2、レベル3と分けられており、レベル1のアスベストが最も発じん性が高く、危険とみなされています(吹付けアスベストなど)。
レベルの数字が低いほど危険なので、間違えないようにしましょう。
最も一般的に知られている病状は、アスベスト肺や悪性中皮腫などの重篤な疾患ですが、またレベル3で比較的発じん性が低いものでも、アスベスト肺などの健康被害を受ける可能性があるので注意が必要です。
アスベストとよく間違えられる素材について
アスベストは見た目が似ている無害な他の素材と間違えられています。
アスベストと誤認される物質には、ロックウールやグラスウールなどがありますが、アスベスト繊維が持つ特有の性質を利用し、判断することができます。
アスベストが引き起こす重大な健康被害について
アスベストは、いくつかの重大な健康被害を引き起こすことが国際がん研究機関(IARC)でも発表されています。ここでは、報告されているアスベスト関連疾患について説明していきます。
アスベスト肺
アスベスト肺は、アスベスト繊維が肺に蓄積し、肺組織が線維化する「じん肺」の一種です。
この病状は、息切れや慢性的な咳やたんの原因となり、重篤な場合には命を脅かす可能性があります。
10年以上経過してから発病し、アスベストが原因かどうかは判断が難しく医師による問診が必要です。
肺がん
アスベストの曝露は、肺がんのリスクを顕著に高めます(約5倍)。特に、喫煙者である場合、そのリスクは50倍にも増加します。
肺がんは、咳や痰などの症状がある場合が多いですが、CT検査などにより無症状でも異常が見つかることもあります。
悪性中皮腫
悪性中皮腫は、アスベスト曝露によって最もアスベストに関連付けられるがんの一種で、主に胸膜、腹膜や精巣鞘膜に発生します。
この病気は呼吸困難や胸部圧迫感を引き起こしますが、中皮腫に特徴的な症状の早期発見・治療が困難です。
びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚は、胸膜が線維化し厚くなることにより生じる症状で、呼吸困難や胸部の痛みを引き起こします。
びまん性胸膜肥厚についても、30〜40年程度の潜伏期間を経てから発症し、職業性ばく露が3年以上であることがほとんどと言われています。
アスベストの健康被害への補償
アスベストによる健康被害は、多くの労働者やその家族に深刻な影響を及ぼしてきました。
この問題に対する社会の認識が高まる中、石綿健康被害救済制度が設けられ、石綿健康被害救済基金から補償を受けることができます。
ここでは、アスベストによる健康被害への補償について、特に注目されている事例や補償の難しさについて解説します。
クボタショックについて
「クボタショック」とは、アスベストによる健康被害が社会問題として広く認識されるきっかけとなった事件です。
この事件は、従業員のみならず、周辺住民までもアスベストばく露による健康被害を引き起こしました。
それにより深刻さを浮き彫りにし、被害者への補償や対策の必要性を訴える大きな動きにつながりました。今でも被害者は5分も続けて歩くことができないなど、深刻な健康被害を訴えています。
出典:2005年6月29日の毎日新聞夕刊による
アスベストによる肺疾患の証明は難しい
アスベストばく露による肺がんは、補償を受けるための証明が非常に難しいとされています。
肺がんなどはアスベスト以外の要因でも発症するため、特定の健康被害がアスベストばく露に直接起因すると証明することが補償の過程で大きな障壁となっています。
また、30〜40年もの長い潜伏期間の後、発病するので、当時どのようにアスベストを吸引していたかなどを証明できないケースもあります。
もしアスベストによる健康被害を訴えたい方は、石綿健康被害救済法に詳しい弁護士に相談することが望ましいです。
アスベストの法改正の最新情報について
アスベストに関する法律は、公衆衛生と労働者の安全を守るために重要な役割を果たしています。
アスベストの健康への影響に対する理解の深まりと社会的な認識の変化により、アスベストに関する法律は年々整備されてきました。
ここでは、アスベスト使用の全面禁止までに至る過程やアスベストの事前調査に関する最新の法改正について紹介します。
アスベスト使用の全面禁止までの法改正について
1970年以降、アスベストによる健康被害の症例が多くなり、殆どの国では、アスベストの使用を全面的に禁止する方向で法律が改正されています。
これらの法改正は、アスベストによる健康被害を未然に防ぐためのものであり、新たな建材の使用やアスベストを含む既存建材の扱いに厳格な規制を設けています。
日本では2006年以降は、ごく一部を除き使用禁止と法律で定められ、意識的に全面禁止という強いワードが使われました。
アスベスト含有の建材を解体・改修における法改正について
アスベストを含む建材の安全な解体や改修作業に関しても、様々な規制が次から次へと設けられました。
これには、アスベスト含有の建材を扱う作業者や周辺住民など、作業の安全性を高めるための措置が含まれています。
%%%%%%%ここにアスベスト法改正の歴史の記事いれる%%%%%%
【最新】2023年10月1日〜有資格者による事前調査の義務化
2023年10月1日からは、アスベスト含有の可能性がある建材に対して、事前調査において有資格者が行うことが義務付けられます。
この法改正は、アスベストの事前調査において、適切な処理が行われない可能性をさらに低減させることを目的としています。
%%%%%%%ここにアスベスト2023の法改正の記事いれる%%%%%%
まとめ
アスベストによる健康被害は深刻な問題であり、その対策として補償や法改正が進められています。アスベストの使用を制限し、安全な作業環境を確保することで、将来的な健康被害を最小限に抑えることが求められています。
これらの取り組みを通じて、アスベストによる被害を防ぐための意識がさらに高まることを期待します。
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