アスベストの調査・除去に必要な資格を徹底解説!|2023年最新

たった5分でわかる アスベスト調査・除去に必要な資格

法改正によりアスベスト調査には資格が必要となりましたが、作業にどのような資格が必要なのか、どこでその資格を取れるのか、お困りではないでしょうか?

複数の資格があるため、分かりにくく困っている方も多いはずです。加えて法改正もあったため、すべてを把握するのは難しいでしょう。

この記事ではアスベストに関する仕事にどのような資格が必要なのか、それはどうすれば取得できるのか、また法改正で把握すべきことについて解説していきます。

この記事を読むと分かること

・アスベストの調査、除去に必要な資格
・必要な資格の取得方法
・資格なしでできる業務

目次

なぜアスベストに関する業務には資格が必要なのか?

アスベストの取り扱いは、有資格者が作業をすることを大気汚染防止法で義務付けられています。
それはアスベストが重大な健康被害を引き起こすおそれがあるためです。アスベストの繊維はヒトの髪の毛よりも非常に細く、肉眼では見ることができません。
そのため切断や研磨の際に繊維が空気中に浮遊しやすく、吸入されると肺に沈着し、多くは肺の組織内にとどまります。
体内にとどまったアスベストは肺の線維化や肺がん、悪性中皮腫などの原因となります。
健康被害が発症されるまでの潜伏期間が15年~40年と長いため、「静かな時限爆弾」とも呼ばれているのです。

このように取り扱いが非常に難しい特徴があるため、資格を持った専門家による作業が必要とされています。

必要な資格は法改正によってどう変わる?

法律によって取り扱いに資格が必要となっているアスベストですが、かつては資格無しでの取り扱いが一部可能でした。
しかし、健康被害などが相次いだため、2021年4月1日から2023年10月1日にかけて大気汚染防止法の一部を改正する法律が順次施行されています。

2021年4月1日施行:規制対象の拡大

従来、石綿含有建材はレベルで分類され、レベル3のその他の成形板・仕上塗材などの石綿含有建材は、作業基準が設けられていませんでした。
2021年の法改正により、新たに作業基準が設けられることとなりました。

この規制対象の拡大によって、レベル3のその他の石綿含有建材が調査の対象に含まれる事となり、すべての石綿含有建材が規制対象となりました。

この法改正により、アスベストの調査・除去作業はさらに専門的な知識と技術が必要とされ、その重要性が一層高まっています。
また、作業者も安全が担保された現場での作業が可能になりました。

2021年4月1日施行:作業基準遵守義務者の拡大

アスベストが使用されている建築物等の解体、改造、補修の際には、作業の種類ごとに遵守しなければならない作業基準が定められています。
この作業基準の徹底義務は今まで元請業者だけのものでしたが、法改正により下請をした業者もこの義務の対象となりました。

参考:大気汚染防止法におけるアスベストの規制について|船橋市

2021年4月1日施行:発注者への作業結果の報告

大気汚染防止法によって定められた特定工事の元請け業者は、特定粉じん排出等作業が完了した後、発注者へ作業結果を報告し、その写しを保存することが義務付けられるようになりました。

参考:札幌市|特定粉じん排出等作業完了報告書|事業者向けマニュアル

2022年4月1日施行:事前調査結果の報告

下記の一定規模以上の特定工事については、法改正により、原則として電子システムによる報告が必要となりました。

  • 解体部分の床面積が80m2以上の建築物の解体工事
  • 請負金額が税込み100万円以上の建築物の改修工事
  • 請負金額が税込み100万円以上の下記工作物の解体工事・改修工事

参考:環境省|石綿事前調査結果の報告について

【重要】2023年10月1日施行:事前調査の有資格化

建築物のアスベストの使用実態を事前調査するには専門知識と経験が必要ですが、2023年10月1日から事前調査は資格者による調査が義務付けられることになりました。
このため、建築物の解体・改修工事を行う事業者や事前調査を行う事業者は、資格者の育成を計画的に進める必要があります。
個人での施行においては事前調査の義務はありませんが、作業基準の遵守義務は適応されるため、有資格者による事前調査をおすすめします。

参考:有資格者によるアスベスト調査が義務付けられます|足立区

アスベスト調査・除去に必須な4つの資格

アスベストの調査・除去には必須となる4つの資格があります。

  • 石綿作業主任者
  • 石綿取扱作業従事者
  • 石綿含有建材調査者
  • 日本アスベスト調査診断協会への登録

これらは行うことができる作業、取得方法が違うため、一つずつ解説していきます。

石綿作業主任者

アスベスト除去に関わる作業の計画立案、現場での指揮監督を行うことができる資格です。
事業者は、石綿取扱作業について最低1人石綿作業主任者を選任する義務があるため、今後も需要が増す資格であると言えるでしょう。

取得には、石綿作業主任者技能講習を修了する必要があります。
取得方法は都道府県労働局長の登録を受けた登録教育機関が行う10時間ほどの技能講習を受講し、別途試験を修了することです。

技能講習の例:石綿作業主任者技能講習|建災防

資格取得に必要な資格はありませんが、資格を用いて業務につくことができるのは18歳以上となり、受講自体も18歳以上を受講対象者としている講習もあります。

参考:試験で出る問題

石綿による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
  1. じん肺は肺がんが合併する頻度が高いことが報告されている。
  2. 胸膜中皮腫の発症リスクは白石綿が最も危険性が高い。
  3. 石綿は非常に微細であるため、吸い込んでも気がつきにくい。

引用:安全教育センター

石綿取扱作業従事者

石綿取扱作業従事者の資格は、アスベスト関連の作業に従事する際に必ず必要になる資格です。
この資格がないと、解体現場に入ることはもちろん、アスベスト入り建材の運搬作業のような、アスベストに関わる仕事を行うことができません。
労働安全衛生法に基づき、資格の取得が義務づけられており、従業員が資格を持たずに就労し違反すると事業者は罰則が科されます。

  • 受験資格:18歳以上
  • 取得方法:講習会の受講

特にアスベスト解体現場や内装工事会社での需要が高い資格です。修了試験などはありません。講習会はオンラインでも受講可能で、比較的取得しやすい資格と言えます。

特別講習の例:石綿取扱い作業従事者特別教育WEB講習|中小建設業特別教育協会

免除条件

石綿作業主任者の技能講習を受けた方は、この資格の講習が免除されます。
石綿作業主任者は指導する立場、石綿取扱作業従事者は指導を受けて作業に従事する立場となるため、これからの仕事にどちらが必要になるかをよく考えて講習を受けることをおすすめします。

石綿含有建材調査者

2023年10月1日から、建築物の解体・改修工事を行う前にアスベストの有無の事前調査を石綿含有建材調査者の資格を持つ者が行うことが義務付けられます。
これまでは有資格者ではない者も調査を行うことができましたが、これから資格を持っている人の需要は今後ますます広がることでしょう。

資格取得条件

最終学歴や経験などによって細かく区分されるため、条件をよく読んで申し込む必要があります。
受講申込の記載事項に虚偽があった場合、法律に基づく処罰があるため、条件を正確に把握しましょう。以下の条件のいずれかに該当する場合、資格取得条件があります。

  1. 石綿作業主任者の資格がある
  2. 大学の建築・またはそれに関連する課程を卒業した後、建築に関して二年以上の実務の経験がある
  3. 建築に関する短期大学※1を卒業した後、建築に関して3年以上の実務の経験を有する者
  4. 建築に関する短期大学、又は高等専門学校を卒業し、建築に関して4年以上の実務の経験がある
  5. 建築に関する課程の高校、または中学校を卒業した後、建築に関して7年以上の実務の経験がある
  6. 建築に関して11年以上の実務の経験がある
  7. 特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した上で、建築物石綿含有建材調査に関して五年以上の実務の経験がある
  8. 建築行政に関して二年以上の実務の経験がある
  9. 石綿の飛散の防止に関するものに限り、環境行政に関して二年以上の実務の経験がある
  10. 産業安全専門官・労働衛生専門官・産業安全専門官・労働衛生専門官のいずれかの経験がある
  11. 労働基準監督官として二年以上その職務の経験がある
  12. 2~11のいずれかと同等以上の知識及び経験を有する者

1:修業年限が三年であるもの、または専門職大学の三年の前期課程
2:夜間に授業を行うものを除く

資格区分

建築物石綿含有建材調査者には、以下のような区分があります。

  • 特定建築物石綿含有建材調査者
  • 一般建築物石綿含有建材調査者
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者

特定と一般の違いとは?

特定建築物石綿含有建材調査者と一般建築物石綿含有建材調査者は、現段階で従事できる業務範囲には違いはありません。
しかし、特定では一般と同様のコースを修了した後、実地研修と口述試験を受けなければならないため、より難易度が高いと言えます。
特定建築物石綿含有建材調査者は一般建築物石綿含有建材調査者よりもアスベストの調査・取り扱いについて知識を持っていることを示すことができる資格です。

全国の講習を受けられる期間:建築物石綿含有建材調査者

2023年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録されている者

施行日までに後述するアスベスト診断士を取得し、日本アスベスト調査診断協会に登録されている場合は、施行日以降もアスベストの事前調査を行うことができる資格を持ちます。
日本アスベスト調査診断協会に登録されているアスベスト診断士は、サイト上で名前が登録されているため、委託先の業者が登録されているかチェックすることができます。

日本アスベスト調査診断協会会員一覧

アスベスト調査・除去に関わるその他の資格

法律で必要な資格の他にも、以下のような資格はアスベストに関する業務で役立つでしょう。

  • アスベスト診断士
  • 作業環境測定士

アスベスト関連の作業は知識・経験が必要なため、保有していることでより作業を円滑に進めらます。事前調査を任せる上でも、これらを資格を持っているかどうかは重要です。

アスベスト診断士

アスベストに関する業務の知識を持ち、アスベスト関連業務に対して適切なアドバイスを行うことができることを示す資格です。具体的には以下のような診断ができます。

アスベスト診断士ができること
  • 既存建築物のどこにアスベストが使用されているかの診断
  • 使用されているアスベスト含有製品の処理要否の判断
  • アスベスト含有製品等の処理工事が適正工事であるかのチェック診断

取得にかかる費用は12万円(非課税)と他の講座と比較すると高額ですが、在籍している会社がJATI協会の会員であれば10万円での参加申し込みができます。

作業環境測定士

作業環境測定に必要な国家資格です。労働安全衛生法によって作業環境が定められています。

第一種と第二種があり、第二種ではアスベストの粉じんが発生する可能性のある作業場で、作業環境測定を行うことができます。それに加え第一種では、特定化学物質に関わる分析ができます。

参考:安全衛生技術試験協会

資格がなくてもできる作業はあるの?

アスベストはその性質上、非常に多くの場面で資格者が活躍しています。しかし、まだ資格を必要としない作業もあります。

石綿事前調査結果の報告

事前調査には有資格者による作業が必要ですが、事前調査結果の報告に資格は必要ありません。
したがって、事前調査・検体の分析のみを有資格者・事業者に依頼し、報告については各自で行う、ということが可能です。

設計図書等での事前調査

工事対象となる建築物がアスベストを使用しているかどうかを、書面のみで確認できる場合は資格が必要ありません。
具体的には、対象の建築物が2006年9月1日以降に設置されたことを確認することができれば、有資格者による調査が必要なくなります。

ただし、以下の工作物については事前調査の対象となりますのでご注意ください。

  • 非鉄金属製造業の用に供する施設の設備(配管を含む。以下同じ。)であって、平成19(2007)年10月1日以前にその接合部分にガスケットを設置したもの
  • 鉄鋼業の用に供する施設の設備であった、平成23(2011)年3月1日以前にその接合部分にグランドパッキンを設置したもの
  • 化学工業の用に供する施設の設備であって、平成24(2012)年3月1日以前にその接合部分にガスケットを設置したもの

参考:建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策について|さいたま市

まとめ

大気汚染防止法によって定められている、アスベストの調査・除去をする上で必要な資格は以下のようなものがあります。

  • 石綿作業主任者
  • 石綿取扱作業従事者
  • 石綿含有建材調査者
  • 日本アスベスト調査診断協会への登録

資格を取らずに行うことができる作業も一部ありますが、ほとんどは資格が必要な作業となります。専門の業者への相談が必要となるでしょう。

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この記事の執筆者

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アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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