【図解】アスベストが建築物に及ぼすリスクとは?対策・見分け方もご紹介

アスベストは、熱や摩擦に強く安価なことから、日本の建築物に多く使用されていました。

しかし、アスベストを大量に吸収すると、じん肺、肺ガン、悪性中皮腫等を引き起こす危険性があることが医学的に明らかになり、現在は使用禁止となっています。

アスベストが建築物に及ぼすリスクは極めて高いため、適切な対策と処理が必要です。

一方で、自分の住宅に使用されている場合の対処法や、どんなリスクがあるのか十分に理解していないケースも多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、アスベストの人体への影響や建築物に及ぼすリスク、所有している建築物にアスベストが含まれている際の対処法や見分け方を詳しく解説します。

ぜひ参考にしてみてください。

目次

アスベストとは?

ここではアスベストとはどんな物質なのか、建築物に使用されている理由を解説していきます。

アスベストの性質

アスベストとは「せきめん」や「いしわた」とも呼ばれている、天然の繊維状けい酸塩鉱物です。

大きく分けて6種類あり、そのうち「蛇紋石グループ」と「角閃石グループ」に分かれます。

アスベストの種類について分類し、特徴を記した表
アスベストの種類の表

図のようにアスベストの種類によって、それぞれ異なる特徴があります。

アスベストの用途は3,000種類以上とされており、高度成長期にはビルなどの鉄骨構造建築にも使用されていました。

アスベストが建築物に使われていた理由とは?

アスベストが建築物に使われていた理由は、以下の5つです。

  • 断熱性、耐火性に優れている
  • 電気を通しにくい
  • 耐摩擦性があり、丈夫
  • 他の物質と密着しやすい
  • 安価

このような優れた性質を活かして、建築物の断熱材や天井材、接着剤などの工業製品に多く使用されました。

しかし、アスベストを取り扱う製造業労働者の多くに、共通して呼吸器に関する病気が発生している事実が明らかになったのです。

その後も健康被害が相次いだことによって、アスベストは2006年に全面禁止となりました。

アスベストの人体への影響

「身体に悪い物質だけど、どんな健康被害があるの?」

「いつまでアスベストが使用されていたの?」

アスベストが有害物質だと分かっても、実際どんな健康被害があったのか、いつまでアスベストが使われたかまでは、把握できていない人も多いのではないでしょうか。

ここでは、アスベストが全面禁止になるまでの歴史や、アスベストが引き起こす健康被害について詳しく解説していきます。

アスベスト規制の歴史

アスベストの規制は1975年より段階的に開始され、2006年に全面禁止になりました。

1975年 特定化学物質等障害予防規則の改正

アスベスト含有率が5%を超える吹き付け作業が、原則禁止となりました。

1995年 労働安全衛生法施行令・特定化学物質等障害予防規則改正

アスベスト含有率が1%を超える吹き付け作業が、原則禁止となりました。

さらに、アモサイト(茶石綿)・クロシドライト(青石綿)の製造、輸入、譲渡、使用が全面禁止されます。

2004年 労働安全衛生法施行令改正

アスベスト含有率が1%を超える、全てのアスベスト製品の製造、輸入、譲渡、使用が全面禁止されました。

また、石綿セメント円筒・住宅屋根用化粧スレートなどを含む10品目の製造も禁止となりました。

2006年 労働安全衛生法施行令改正

アスベスト含有率が0.1%を超える、全てのアスベスト製品の製造、輸入、譲渡、使用が全面禁止されました。

この改正によって、日本でのアスベスト使用は基本的に全面禁止となりました。

ジョイントシートガスケットなど、猶予されている製品も存在します。

アスベストが引き起こす健康被害

アスベストの繊維はとても細く、空気中に飛散しやすい特徴があります。

そして、アスベストによる健康被害は、この空気中に飛散した繊維を吸い込むことで発生します。

主な健康被害は、以下の3つです。

  • じん肺
  • 肺がん
  • 悪性中皮腫
1.じん肺

じん肺とは、アスベストを含んだ埃を大量に吸い込むことで起こる、肺の繊維増殖性の変化です。

徐々に、咳や痰、息切れなどの症状があらわれます。

2.肺がん

肺がんとは、アスベストの吸収から約20年〜40年後に発症する肺の悪性腫瘍です。

初期症状はなく、徐々に咳や痰に血が混じる、息切れなどの症状が見られます。

3.悪性中皮腫

悪性中皮腫とは、胸膜や腹膜などに発生する悪性腫瘍です。

アスベストの吸収から約30年〜50年後に発症する可能性があり、主に胸の痛みや咳などの症状が見られます。

アスベストによる健康被害の特徴は、初期症状はなく、数十年後に発症することです。

アスベストは建築物のどこに使用されている?

実際、建築物のどの部分に、アスベストが使用されているのでしょうか。

アスベストは、以下の部分に使用されています。

  • 吹き付け材
  • スレート
  • 保温材
  • フローリング材

1.吹付け材

吹き付け材とは、アスベストにセメントや水を加えて混合し、吹き付け機を使って吹き付けたものです。

耐火、断熱、吸音の目的で、主に壁や天井・屋根に使用されました。

2.スレート

スレートとは、粘板岩を薄い板状に加工した建築材です。

防音性と耐久性に優れているため、主に建物の外壁や屋根に使用されました。

3.保温材

アスベストは保温性も優れていたため、ボイラー本体や配管、化学プラントの保温材としても使用されました。

木造一戸建て住宅よりも、会社のビルや事務所、工場などの建物に多い傾向です。

4.フローリング材

アスベストは、建物の外壁や屋根だけでなく、フローリング材としても使用されました。

防水性が高いことから、住宅の洗面所や台所などの水回りに多く使われています。

木造一戸建て住宅でも使用されている可能性があります

アスベストは1970年代〜1990年代頃に多く使われており、2006年に全面禁止されています。

そのため、2006年以前に建てられた家にはまだアスベストが使用されている可能性があります。

建築時に依頼した工務店やハウスメーカーに問い合わせて、アスベストの有無を確認しましょう。

また、場合によってはアスベストの専門業者に調査を依頼しなければなりません。

アスベストが建築物に含まれる場合のリスクとは?

アスベストが建築物に含まれている場合、居住者の健康リスクはもちろん、解体時の費用や売買におけるリスクも伴います。

多方面から様々なリスクが発生しますが、主なリスクは以下の3つです。

  • 居住者の健康リスク
  • リフォームや改装時のリスク
  • 建築物売買の際のリスク

アスベスト含有建築物が、どのようなリスクをもたらすのか正しく理解し、適切な対策を取りましょう。

居住者の健康リスク

居住者の健康リスクは、住宅の吹き付け材に含まれるアスベストの劣化によって、空気中にアスベストが飛散し、気づかぬうちに吸収してしまうことです。

アスベストを大量吸収すると、呼吸器系の病気にかかる確率が高まります。

もし現時点でアスベスト含有建築物に住んでいる人は、早急に事前調査が必要です。

リフォームや改装時の調査・除去・封じ込めのリスク

アスベスト含有建築物をリフォーム、改装する際の最大のリスクは、「工事時のアスベストの飛散」です。

前述のように、アスベストは飛散しやすい物質のため、周囲への飛散防止も徹底しなければなりません。

 リフォームや改装を検討している人は、一度設計図書を確認し、アスベスト含有の有無を調べましょう。

解体時の費用増加

アスベストの解体費用の相場は、1㎡あたり1.0万円〜8.5万円です。

解体費用は、通常の解体工事費用にアスベスト除去工事費用が加算される仕組みのため、通常より割高になります。

しかし、解体費用には国の補助金制度を利用できる場合もあるため、一度自治体に確認をしてみましょう。

建築物売買の際のリスク

アスベストを含む建築物の売買の際は、売主は買主に「アスベスト調査の実施に関する説明」をしなければなりません。

つまり「建物のアスベスト使用状況について説明する」ことが義務となっています。

例えば、売主側が「アスベストは使用していない」と説明し、その後買主の調査でアスベスト使用が発覚した場合、売主側は説明義務違反に当たるため、損害賠償の対象になることがあります。

所有している建築物にアスベストが含まれている可能性がある場合

それでは、住宅や会社ビルにアスベストが使用されている可能性がある場合、どのような対策が必要なのでしょうか。

対策方法は、以下の3つです。

  • アスベスト含有調査を行う
  • アスベスト除去工事を行う
  • アスベスト封じ込め工事で飛散を防止する

アスベスト含有調査を行う

建築物にアスベストが含まれているか、専門家に調査を依頼しましょう。

調査の結果、0.1%を超えるアスベストが含まれていた場合は、早急に除去工事を進める必要があります。

除去工事を行う場合は、工事開始の14日前に工事計画や除去手順、安全衛生管理書などの必要な書類を揃えて、行政へ届出をしなければなりません。

なお、調査結果の報告は元請負業者が除去工事に着手する前までに行います。

アスベスト除去工事を行う

各種届出が完了したら、アスベスト除去工事を行います。

以下が、工事の流れです。

  • アスベストの飛散防止の足場と養生シートを設置し、作業場所を取り囲む
  • 集じん・排気装置を稼働させ、除去する
  • 除去したアスベストは、二重に梱包または固形化させ、適切に処分する
  • 使用した工具等に付着したアスベストも清掃する
  • 足場や養生シートを撤去する

このように、まずアスベストの飛散防止の下準備を念入りに行い、適切に処分することで、安全に除去工事を進められます。

アスベスト封じ込め工事で飛散を防止する

封じ込め工事は、建物内のアスベスト内部に溶剤を吹きかけることによって、アスベストが飛散しないようにする工法です。

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まとめ

アスベストが使用されている建築物は、人体に健康被害などの悪影響を及ぼす可能性があるため危険です。

しかし、事前にアスベストについてや除去工事の流れなどを知っておくことで、そのリスクを回避できます。

本記事で紹介したことを参考にして、アスベストを適切に処理しましょう。

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この記事の執筆者

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アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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