【図解】建材や工業製品のアスベスト含有は年代でも判定できる?

アスベストは、過去にはその優れた耐火性、耐熱性、絶縁性から建材や工業製品に広く利用されていました。

しかし、1970年代からアスベスト繊維の吸入が健康に深刻な影響を与えることが明らかになり、多くの国でその使用が厳しく制限されるようになりました。

年代別にアスベストの使用状況を知ることは、必要な対策を講じる上での第一歩となります。

この記事では、アスベストの使用が法律によってどのように規制されてきたのかをわかりやすくまとめました。

また、アスベストが使用されている可能性のある建材や工業製品を年代別にどのように特定できるのかを、図解を交えながら解説します。

目次

アスベスト使用に関連した法改正による規制の歴史

1950年代にアスベストの健康被害が発覚

アスベストは、軽くアルカリや酸に強いだけでなく、丈夫で安価であることから、「奇跡の鉱物」と呼ばれていました。

しかし、1959年のWagnerが発表した研究により、中皮腫とアスベスト関連が証明され、アスベストによる健康被害が多発していたことが示されました。

1975年にアスベストの規制がスタート

1975年、アスベストに関する初の法的規制が日本で導入されました。その法改正により5重量%を超える石綿の吹き付けを原則禁止となりました。

しかし、アスベスト含有率が低い建材の使用を完全には禁止しておらず、特定の用途や製品における使用量の削減に焦点を当てていました。

2006年にアスベスト使用が全面禁止

2006年、アスベストにばく露することによる健康被害に対する認識が一層深まり、その結果としてアスベストの使用を全面的に禁止する法律が施行されました。

労働安全衛生法施行令が改正され、0.1重量%を超えるアスベスト含有されている建材や工業生産が原則として禁止されました。

ガスケット・パッキンについては禁止の対象外となりましたが、全面禁止という強いワードが使われ、アスベストへの社会的な意識が更に加速されました。

2012年にアスベストを含む製品の製造禁止(例外なし)

アスベストの使用禁止はさらに進み、2012年にはアスベストを含む製品の製造も例外なく禁止されました。

これは、ガスケットやパッキンにおける技術が発達しアスベスト含有の製品を使う必要がなくなったためです。

以下に、法改正を年表形式にわかりやすくまとめました。

アスベストが使用されている場所とは?

アスベストは住宅やオフィスビルなどの様々な箇所で使われてきました。

ここでは、特に注意が必要なアスベストの含有場所や建材について解説します。

吹付けアスベスト

吹付けアスベストは、建物の天井や壁に防音や防火の目的で使用されていた材料です。

特に昭和50年代(1970年代)までの建物に多く見られ、その繊維状の特徴から発じん性が高く、吸い込むことで健康に悪影響を及ぼす可能性が高いため、最初に法規制により使用が禁止されたアスベストでもあります。

アスベストの危険性を表すレベルでもレベル1という最も危険なアスベストとして分類されています。

引用:目で見るアスベスト建材(国土交通省)

吹付けロックウール

吹付けロックウール自体はアスベストを含まない場合もありますが、アスベストの使用禁止前には、アスベストと混ぜて使用されているケースもあります。

ロックウールという素材は、健康を害することはないですが、アスベストとよく間違えられるので、注意が必要です。

引用:目で見るアスベスト建材(国土交通省)

アスベスト含有保温材

配管やボイラーなどの保温材にもアスベストが使用されていることがあります。

主にアスベストと他の鉱物と混ぜて作られる保温材は、長年にわたる使用により劣化することがあり、アスベスト繊維が露出しやすくなります。

特に古い建物や設備のメンテナンス時には、アスベストの適切な管理が重要となります。

引用:目で見るアスベスト建材(国土交通省)

その他のアスベスト含有建材

アスベストは、フロアタイル、壁材、パイプ断熱材など、さまざまな建材に含まれています。(2006年以前の構造物や建築物には含まれている可能性あり。)

アスベストが使用されている可能性のある場所や製品を正確に識別し、適切な対策を講じることは、私たちの健康を守るために非常に重要です。

年代によりアスベスト含有を判定する方法

建材や製品にアスベストが含まれるか否かを判断する一つの手段として、建物や製品の年代を基にした判断があります。

しかし、この方法はあくまで、アスベスト含有を確定するわけではないので、あくまで参考程度に考えてください。

正確な判断なアスベストに詳しい専門家への相談をおすすめします。おすすめのアスベストに詳しい専門家は、記事の最後に紹介してるのでぜひご確認ください。

アスベスト含有が確定するわけではない

建物や製品の年代は、アスベスト含有の可能性を示唆する指標の一つに過ぎません。

たとえば、アスベスト使用が全面禁止された2006年以降に建設された建物であれば、原則としてアスベストは含まれていません。

ですが、2006年以前に建てられた建物であっても、すべてがアスベストを含むわけではありません。

そのため、年代をもとにアスベストの有無を推測することはできますが、それだけで確定的な結論を出すことはできません。

図面による調査を行う

アスベスト含有の可能性を見極めるためには、図面調査を行うことが重要です。

特に、アスベストの健康リスクを最小限に抑えるためには、確実な情報に基づいた適切な対策が必要です。

そこで、2006年以降の建物である場合は、現地調査する過程をスキップできる場合があります。

しかし、2006年以降の構造物・建築物の場合でも、報告義務などは必須になるので注意が必要です。(2022年から罰則も設けられています。)

年代別のアスベスト含有製品の一覧

アスベストの使用が広範囲に及んでいたことを踏まえると、年代別にどのような製品にアスベストが含まれていたのかを知る必要があります。

以下では、アスベスト含有が確認された主な製品と、ガスケットやパッキンなどの特定の用途での例外について説明します。

ガスケット・パッキンの例外について

ガスケットやパッキンは、機械や設備の接合部分に使用される部品で、その密封性や耐熱性が求められます。

アスベストは安価で高機能な特性を持っているため、規制前は広く使用されていました。 しかし、技術的な観点から、20006年のアスベスト使用の全面禁止後もアスベスト含有ガスケットやパッキンが例外として認められていました。

ただし、2012年には、代替素材での代用が技術的に可能になったため、全面禁止に例外がなくなりました。

アスベスト製品の製造年代などの一覧について

アスベスト含有製品は多岐にわたりますが、特に多用されていたのは以下のような製品です

年代使用箇所
1950年代〜1970年代屋根材、床材、壁材、断熱材、吹き付けアスベストなど建築材料に広く使用。
1980年代アスベストの健康リスクに関する認識が高まり、使用が減少し始める。
それでもなお、配管の保温材、ブレーキパッド、クラッチライニングなどに使用。
1990年代〜2000年代初頭アスベスト使用の規制強化。特定の産業用途を除き、新たな建築材料や製品には使用されなくなる。
2006年以降アスベストの使用が全面的に禁止される。ただし、ガスケットやパッキンなど、限定された用途での特例が存在。
2012年以降例外を認めずアスベストが使用禁止に。

以下は、国交省や経産省が出しているアスベストを含んだ製品一覧です。

アスベスト含有が疑われる製品と照らし合わせてご確認してください。

参考:アスベスト含有建材データベース|国交省、経産省の公式ページ

参考:石綿含有材料の一覧|環境省

まとめ

アスベストはかつて多くの建材や工業製品に使用されていましたが、その健康への危険性が明らかになった今日では、除去や調査において社会問題になっています。

アスベスト含有製品の特定と適切な管理、取り扱いが、健康被害を防ぐ鍵となります。

アスベストに関連する問題に直面した場合は、料金・サポート・実績などを重視したうえで、専門家への相談をおすすめします。

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この記事の執筆者

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アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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