近年法改正が続いているアスベストですが、マンションなどに含まれているようなイメージがありますよね。
実は、木造一戸建てでもアスベスト対策が必要なケースが非常に多いのです。
特に、築年数の古い木造一戸建てにはほぼ使用されていると言っても過言ではないでしょう。
アスベストが使用されている場合、解体費用や住宅の市場価値に大きな影響を及ぼします。
この記事では木造一戸建てを想定して、アスベストの対策が必要な箇所や、実際の解体シチェーションをご紹介していきます。
木造一戸建て住宅にはアスベストが含まれる?
結論からお伝えすると、木造一戸建て住宅にもアスベストが含まれる可能性があります。
アスベストがどの程度使用されているかは、住宅の年代や建材によっても異なります。
アスベストには健康リスクがあるため、アスベストが含まれる住宅は除去や対策に追加のコストが必要となり、同時に住宅の市場価値が下がることが多いです。
アスベストが使用されているか否かが、解体費用や市場価値に直接影響を与えるのです。
では、そんなアスベストがこれまでどのような住宅に使用されていたのかを見ていきましょう。
木造一戸建てにもアスベストは使用されていた
かつて、アスベストは素材としての優れた性能から、住宅や産業機械、家庭用品まで幅広く使用されていました。
その使用の9割が建材としての用途だと言われています。
しかし、アスベストは細かい繊維状で空気中に粉じんとして滞留しやすく、長期間吸い込んだ場合、重大な健康被害を及ぼすことが判明しました。
そのため複数回にわたり規制が強化され、2006年9月1日には全面使用禁止となりました。
つまり、着工が2006年9月1日以前の住宅についてはアスベストが使用されている可能性があります。
1960年〜90年代の木造住宅では、アスベスト建材が含まれる木造住宅のほうが多いかもしれません。
木造一戸建てのアスベストが生活に与える影響
木造一戸建てのアスベストが生活に与える影響として、代表的なものは以下の3つです。
- 健康被害
- リフォーム、解体工事
- 不動産価値
健康被害
木造一戸建て住宅にアスベストが使用されている場合、まず気になるのは健康被害でしょう。
実は、アスベストが固定されていて、通常時の使用で空中にアスベストが浮遊しない場合、つまり短期間の低濃度のばく露における健康被害の危険性については、不明な点が多いとされています。
アスベストが露出している場合は飛散のおそれなどがありますので、アスベストを取り扱う専門業者などに問い合わせてみることをおすすめします。
リフォーム・解体工事
次に、機会は少ないですがリフォームや解体工事を行うケースです。
アスベストの規制強化の一環として、法改正により解体や改修・改造などのすべての工事について、工事箇所がアスベストを含むかどうかの事前調査が義務となりました。
さらに、この事前調査は有資格者しか行うことができません。
規制強化・法改正については以下の記事にまとめてありますので、興味のある方は御覧ください。
不動産価値
最後は、不動産価値についてです。
これまで見てきたように、アスベストが住宅に含まれることで、様々な影響があります。
ということは、アスベストを含む住宅は当然資産価値が下がります。
住宅の売買や、遺産相続の際も影響があるため、アスベスト調査を行うことをおすすめします。
このように、アスベストが含まれることによって、生活の様々なステージで影響が出ることが分かりました。
まずは調査を行うことで、アスベストが含まれるか判定し、その後処理をするのか、封じ込めをするのか、専門の業者に相談することをおすすめします。
木造一戸建て住宅のアスベストの見分け方
木造一戸建て住宅にアスベストが含まれる際に、どのような影響があるのかを見てきましたが、調査をする前にアスベストを確認したい方もいるでしょう。
法改正により改修や解体工事を行う場合は、アスベスト調査をする義務が生じます。
そのため、あくまで参考程度であり、調査をするのが一番ですが、アスベストが含まれる可能性があるかを見分ける方法をご紹介します。
築年数によって予想ができる
アスベストの使用が全面禁止されたのは2006年9月1日です。
そのため、記事執筆時の2024年現在で築18年を超えている住宅については、アスベストが含まれる可能性があると言えます。
木造だとしても危険度の高いアスベスト建材が使われている可能性はあるため、注意が必要です。
アスベストが木造一戸建て住宅に使用されている可能性のある箇所
アスベストが木造一戸建て住宅に含まれる場合、どの箇所に使用されているのでしょうか?
代表的な例を、画像付きでまとめましたので、参考にしてください。
屋根葺き材
戸建て住宅で用いられる屋根の中で、最も普及しているのがスレート屋根です。
コロニアル、カラーベストなどとも呼ばれています。
このスレート屋根は、製造年によってはアスベストを含んだ製品となっています。具体的には2004年以前のスレートには、ほとんどアスベストが入っているでしょう。
アスベストの優れた性能から、アスベストを含んだスレートのほうが丈夫で、ノンアスベストのスレートのほうが劣化が早いと言われています。
そのため、築年数の長さに対して、スレートを使用した屋根の劣化が見られない場合、アスベスト含有スレート板である疑いがあります。
切断や破砕をしなければ危険度は低いと言えるため、DIYでの修理等は避けるほうが良いでしょう。
また、たとえ自主施工であっても工事の対象部分にアスベストが含まれているか、有資格者による事前調査をする必要がありますので、専門業者に依頼することをおすすめします。
外壁
外壁にはサイディングと呼ばれるアスベスト建材が利用されていました。
防・耐火性能が高く、耐震性、耐久性にも優れています。壁の中の通気性にも優れており、結露などを防ぐことができることが特徴です。
こちらも2004年まで製造・使用されていました。
木製建材ではないものの、木目のような雰囲気を出せることが見た目の特徴ですが、これだけでは見分けをつけるのが難しいため、検体分析や、事前調査を行うことをおすすめします。
軒裏
アスベストが使用されていた建材として、石綿含有のセメント板・ケイ酸カルシウム板などが軒裏(軒天)に使用されていました。
耐火性・断熱性に優れていたため軒裏によく使用されていました。
断面には補強のための繊維質が含まれます。アスベストの場合は束状で、繊維が非常に舗装です。
製造終了時期は2004年です。
経年劣化でアスベストが露出している場合などは撤去を急ぐ必要があります。
内装材
内装材としては、石膏ボードが代表的です。
石膏が主な素材で、その上から紙材で成形したボードになります。多くの場合アスベストを含んでいるのは紙材の部分となり、その含有率は1%程度です。
判別は難しいため、分析検査をすることでアスベスト含有の判定をする必要があります。
一方、石膏部分にアスベストが含まれる場合は、通常の石膏ボードより厚みがあるという特徴があります。
製造終了時期は1986年です。
アスベスト調査が一部不要なケース
ここまで、使用されている可能性の高い箇所をご紹介してきましたが、実際に解体工事や一定規模以上の工事を行う場合はアスベスト調査をする必要があります。
しかし、できることなら費用をかけずに対策をしたいという方も多いハズ。
そこで、次はアスベスト調査が一部不要となるケースについてご紹介いたします。
図面から判断出来るケース
事前調査が例外的に不要となるケースの一つは、図面からアスベストを使用していないと判断できるケースです。
先程も述べましたが、着工日が2006年9月1日以降であると証拠が書面で残っている場合は、検体を採取しての事前調査が不要となります。
加えて、2006年9月1日以前に着工した建築物についても、
- 設計図書
- 工事該当箇所の建材の商品名
- その商品についてメーカーが石綿非含有であることを証明する書面
- 建材の製造年月日
これらの判断材料を調査結果として記録すれば、事前調査は不要となります。
事前調査が不要なケースについては、以下の記事で分かりやすく解説していますので、気になる方は御覧ください。
みなし工事を行うケース
判断が難しい建材について、対象の建材をアスベスト含有とみなして工事をすることで、事前調査を省略することができます。
この場合、該当箇所の建材を、アスベスト含有建材の取り扱いと同じ取扱をすることになり、費用や工数が増えてしまいます。
しかし、アスベスト含有の可能性が高い場合はアスベスト調査の費用をカットできるため、費用効率の良い工事ができる場合があります。
みなし工事については以下の記事を御覧ください。
調査などを適切に行わなかった場合
このようなケースを除き、本来必要な調査、処理を適切に行わなかった場合、直接罰則が課せられます。
以前は適合命令や作業の一時停止命令が出され、これに違反した場合罰則が課せられることになっていました。
法改正により、勧告や命令などの手続きを経ることなく、懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。
以前よりも罰則が強化されているため、注意が必要です。
アスベストが木造一戸建てに含まれる場合の解体までの流れ
ここまで、アスベストについて一般的な情報をまとめましたが、ここで、アスベストが含まれる木造一戸建てを解体することを想定して、具体的な流れを見ていきたいと思います。
解体予定の住宅の条件シミュレーション
今回解体する木造一戸建て住宅の条件は、次のとおりです。
- 二階建て木造住宅
- 築40年
- 延床面積:約90㎡
現在この土地を違う用途に使用するため、解体工事を予定しています。
工事に伴う義務
今回の住宅を解体する場合、まずアスベスト含有を判定するための事前調査を行う義務があります。
アスベスト含有の事前調査は、一部の例外を除いてほぼすべての解体工事が対象となります。
一部例外となるのは、次のような場合です。
- ガラス・石・金属など工事対象の建材が明らかにアスベストを含まない場合
- 建材にほとんど損傷を与えず、アスベストの飛散リスクがない場合
- 平成18年9月移行に着工された建築物の場合
今回の住宅のように、築40年の一般的な木造建築で、かつ解体工事となると、事前調査はほぼ必須となります。
さらに、着工までに必要な義務は事前調査だけでは有りません。
工事規模によっては、アスベスト除去・解体等の工事を行うにあたり、事前調査結果を行政への届出することが義務付けられます。
調査の依頼
さらに、アスベスト関連工事には規制が多く存在するため、住宅を解体する予定がある場合、専門の業者への相談をすることをおすすめします。
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調査結果
今回の住宅では、事前調査を専門業者に依頼し、解体工事の見積もりも依頼することにしました。
そして送られてきた調査結果を見ると…外壁にアスベストを使用した仕上材が使用されていることが判明しました。
クリソタイルが検出されたようです。
これにより、外壁をレベル3のアスベスト建材として取り扱う必要があります。
見積もり
事前調査でアスベストが検出された場合、費用は通常の解体工事よりも高くなる傾向にあります。
アスベストを含む建材の処理は、定められた撤去手順に沿って撤去作業を行う必要があるからです。
なるべく破断などを行わないように手作業で取り外し、梱包してから産業廃棄物として処分します。
通常の重機による解体よりも工数がかかり、処分にも費用がかかるため、費用全体が高くついてしまう、ということです。
見積もりの結果は以下のようになりました。
種目 | 費用 |
---|---|
仮設工事 | ¥300,000 |
解体・撤去工事 | ¥1,000,000 |
運搬・処分 | ¥1,000,000 |
その他 | ¥150,000 |
合計 | ¥2,450,000 |
アスベストを含まない解体工事と比較すると、解体・撤去工事、運搬・処分の項目が40%ほど値上がりしています。
解体工事
解体工事が開始すると、まずはアスベストを含む建材を撤去する必要があります。いきなり重機で解体を始めると、アスベストが飛散してしまうリスクが有るためです。
また、他の廃棄物と混ざってしまった場合、すべての廃棄物を産業廃棄物として処理することになり処分費用が高額になってしまうためです。
木造一戸建てがアスベストを含む際のトラブル
ここまで、具体的なシミュレーションを通して木造一戸建て住宅の解体を見てきました。
今回の解体工事はスムーズに進みましたが、解体工事を依頼する際に起きうるトラブルについて解説していきます。
安すぎる業者の不法投棄問題
アスベストを含む住宅の解体工事は、アスベストの処理の分費用が高くなってしまいます。
発注者としては、どうにかして費用を抑えたいという気持ちがあるはず。
そこで、解体費用が極端に安い業者へ依頼をしてしまうケースを考えましょう。
先程見てきたように、アスベスト解体工事は産業廃棄物の処理にも費用がかかっています。
そのため、相場よりも極端に安い業者は、産業廃棄物を不法投棄している可能性があると考えられます。
不適切な処理は環境汚染や社会問題に繋がり、厳しい罰則が設けられているので、発覚した場合は発注者も厳しい責任を問われるでしょう。
また、産業廃棄物が土地に埋めて不法に処分された場合、住宅を解体した土地の売買に大きな影響が出ます。
トラブルになった場合、廃棄物の有無を知っていたかどうかに関わらず、基本的には売り手側の賠償責任が問われるケースが多いです。
適切な調査が行われない問題
アスベスト含有が発覚すると、工期延長や費用が高くなってしまうことから、意図的にアスベストを見て見ぬふりをしてしまうケースがあります。
その結果、解体工事はアスベスト建材の取り外しなどを行わず、重機で建物ごと壊すこととなってしまいます。
アスベスト建材が粉じんとして大気中に飛散し、近隣住民や作業員の健康に被害を及ぼします。
また、不法投棄問題のリスクも同時にあります。
まとめ
今回、木造一戸建てのアスベストについて、使用されていた建材の例や具体的なシミュレーションを交えて解説していきました。
木造一戸建て住宅でも、外壁や屋根といった部分にアスベストが含まれていることが分かりました。
築年数の経った木造一戸建てでは、ほぼ使用されていると言っても過言では有りません。
特に解体工事では、事前調査が必要となるため、信頼できる専門業者に相談することをおすすめします。
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