アスベストの健康被害については良く知られていることですが、似たような材料との見分け方がわからないという人も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では初心者でもわかる岩綿吸音板とアスベストの見分け方について解説します。
アスベストの健康被害について
アスベスト(石綿と呼ばれる繊維状鉱物)は、断熱性や耐火性、防音性に優れているうえ、アルカリや酸といった化学製品にも強く、かつては建築資材や工業製品にも多く使われてきました。
2012年以降アスベストの使用が全面禁止に
しかし、2012年以降にはアスベストの使用が全面的に禁止されます。
理由としては、アスベストの健康上のリスクがあることが発見されたためです。
アスベストは、ヒトの髪の毛の直径よりも細く、肉眼では見ることが出来ません。
また、軽いという性質も持っているため、飛散すると空気中に浮遊しやすく、人の体に吸入されやすいという特徴があります。
吸い込んだアスベストの一部は異物として痰から体外へ排出されますが、多くの成分は肺の組織に長く留まってしまうのです。
そして、体内に留まった石綿(アスベスト)の成分が原因となり、やがて肺がんや悪性中皮腫といった病気を引き起こすことがわかっています。
基本的には、石綿を吸い込んだ量によって肺がんになるリスクが高いと認められていますが、どの程度の石綿をどれくらいの期間吸い込めば発病するかは明らかにされていません。
岩綿吸音板ってどんなもの?
岩綿吸音板は、おもにビルや学校、病院や公共施設など、身近な建物で使用されている建材です。
この素材は、厚みによって断熱性や吸音性に違いが出るため、断熱性を高くするなら、空気をより多く含む厚いものがおすすめ。
しかし、吸音性は必ず厚みがあるほうが高くなるわけではなく、高音・低音のどちらを重視するかで選ぶべき厚みは異なるのです。
一般的には薄いほうが高音(高周波数の音)に優れ、厚いほうが低音(低周波数の音)に向いています。
ロックウール(岩綿)とは?
岩綿吸音板の素材となる岩綿は「ロックウール」とも呼ばれ、鉄を作るときに発生する副産物を原料に含むため、環境にやさしい素材といえます。
岩綿吸音板は、人の手に触れないような天井などの仕上げ材として使われています。
岩綿吸音板とアスベストは大違い
使用用途も似ているため、見ただけでは違いに気づきにくい岩綿吸音板とアスベスト。
実は環境面でも大きな違いがあります。
岩綿吸音板は環境にもいい?
岩綿吸音板は、岩綿(ロックウール)という人口繊維を板状に加工した建材です。
材料となるロックウールは、製鉄所の高炉から出る溶融スラグ(廃棄物を高温で溶かしたものを冷却し固化させたもの)を繊維状に加工して作られます。
産業廃棄物になるものを有効利用しているという点から、吸音板は環境に優しい建材と言えるでしょう。
アスベストは有害
一方、アスベストは大気汚染の原因となる物質の一つです。
大気汚染防止法で使用を規制されているほか、アスベストが含まれる建材を使用している建物では、解体工事にも十分に環境への配慮が必要です。
アスベストは、髪の毛よりも細かく、飛散しやすいという特徴を持つため、厚生労働省および環境省指定のマニュアルを用いて適切に飛散防止策を実施しなければなりません。
このように、アスベストは一度使われている建物を解体するだけでも環境汚染につながる有害建材なのです。
【図解】岩綿吸音板とアスベストの違いまとめ
では、岩綿吸音板とアスベストの違いはどのようなものがあるのでしょうか。
以下の表にまとめたので、詳しく見ていきましょう。
岩綿吸音板 | アスベスト | |
---|---|---|
成分 | 石綿以外の天然繊維(合成繊維や樹脂) | 石綿 |
耐熱性 | 高い | 高い |
耐久性 | 低い | 高い |
防音性 | 高い | 高い |
健康への影響 | ほとんどなし | 長期間吸入することで、肺がんや悪性中皮腫などのリスクあり |
岩綿吸音板とアスベストは、まず成分が大きく異なります。
岩綿吸音板は石綿以外の合成繊維や樹脂といった天然素材から作られ、アスベストは石綿から作られています。
また、アスベストは吸引することで肺がんや悪性中皮腫といった健康上のリスクがありますが、岩綿(ロックウール)は人体に悪影響を及ぼす心配が少ない素材です。
実際、国際がん研究機関(IARC)によると、お茶やコーヒーと同じ分類の「ヒトに対する発がん性が分類できない」ものとして認定されています。
岩綿吸音板とアスベストの見分けについて
岩綿吸音板とアスベストの見分けは素人が装備なしで行うのは大変危険です。
飛散してしまった場合、肺がんや中皮腫のリスクにつながるおそれがあります。
そのため、調査や見分けは必ず「石綿含有建材調査者」など分野の有資格者に依頼しましょう。 決して素人判断で触ったり、粉塵を発生させるようなことはしないでください。
注意!岩綿(ロックウール)製品の中にもアスベストが含まれている場合がある
アスベストの代用品として使われる岩綿(ロックウール)ですが、平成初期までは「吹付けロックウール」にアスベストを混ぜていた可能性があります。
吹付けロックウールの中に混ざっているアスベストは非常に細かく、目視で確認することはほぼ不可能です。
施工時期や生産時期のみで判断することは確実性がないので、正しく判断するにはプロに頼んで分析することが必要です。
しかも、アスベストが含まれた吹付材は、飛散もしやすいことから取り扱いに気を付けなければなりません。
アスベストは全面禁止されたものの、既存アスベストの除去や廃棄は完了されていないということも覚えておきましょう。
未だにアスベストが使われている建物も現存しているので、注意が必要です。
アスベストがよく使用されている場所とは?
現在は使用禁止となっているアスベストですが、過去にはどのような場所で使われていたのでしょうか。
この章では、実際に使われていたシーンごとに詳しく解説します。
吹付けアスベスト
1956年頃~2005年に建てられた鉄骨造の建物に多く使われた吹付けアスベスト。
吹付けアスベストとは、アスベストとセメントなどの結合材に水を加えたもので、専用の機械で吹付けたものを指します。
おもに壁や天井の防火や耐火、吸音性を確保するために幅広く使用されてきました。
吹付けアスベストは以下のような、石綿を1%以上含む素材も対象となります。
- 吹付けロックウール
- パーライト吹付け
- バーミキュライト
アスベストの中でも特に危険なのが吹付けアスベストとも言われ、人が出入りする場所にむき出しになっていることもあり注意が必要です。
折板屋根のアスベスト含有断熱材
フェルト状の断熱材として、結露防止や断熱といった目的で屋根裏に使用された折板屋根のアスベスト含有断熱材。
倉庫や車庫、学校の渡り廊下といった屋根裏に使用されていましたが、平成元年に製造を終了しています。
使われている素材は以下の3つです。
- フェルトン
- ブルーフェルトン
- レアフォーム
この中でもフェルトンは危険性が高いです。
フェルトンのアスベスト含有率は90%で、アスベストのばく露対策も必要となります。
吹付けひる石
吹付けひる石(バーミキュライト)とは、バーミキュライトとアスベストを混ぜたものを、壁や天井に吹付けたものを指します。
表面に凹凸があり触ると弾力を感じる素材ですが、針を指しても貫通しないのが特徴。
建築物の仕上げ材として、廊下や階段などで使用されていましたが、1988年に製造が終了し現在は使われていません。
吹付けひる石の場合、固まっていることが多いため、基本的に飛散しにくいといわれています。
しかし、劣化が進んでいる場合や解体作業を行う場合には注意が必要です。
アスベストがあると疑われる建材の調査方法
リフォームやリノベーションを行う前には、建材にアスベストが使用されているかを確認することが法律で義務付けられています。
そのため、建物の所有者や管理者は事前に専門業者に依頼し、アスベストの含有調査を行わなければなりません。
調査は「石綿含有建材調査者」など、アスベストに関する専門知識を持つ有資格者による目視や分析が必要不可欠です。
決して自分で判断したり、むやみに建材に触れたりしないよう注意しましょう。
アスベストとよく間違えられる材料
アスベストとよく似ている材料として、岩綿(ロックウール)やグラスウールがあります。
断熱性も優れているということから、同じ用途で用いられています。
3つの素材は繊維系の素材のため、見た目は非常に似ています。
まとめ
アスベストは現在は全面禁止されていますが、過去に使用された建材については現存するものもあります。
一方、岩綿吸音板は健康への被害がほとんどなく防音性や耐熱性に優れているため、アスベストの代替品としても人気があります。
見分け方について解説しましたが、最後はアスベスト分析のプロに任せることが重要です。
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