みなさまのお住まいの屋根裏や壁の中に「アスベスト」が含まれているかもしれない、と考えたことはありませんか?深呼吸をするたびに、微細で鋭い繊維が自分の肺に入り込むかもしれないと思うと、ぞっとしますよね。
この記事では「アスベスト」の正体と、その見分け方について徹底解説します。
ちょっとした工夫で自宅をチェックできる簡単な方法から、専門家による検査まで、幅広くカバーしました。この記事で「アスベストの見分け方」についての知識をつけ、あなたの大切なリビングスペースを守りましょう!
そもそも、アスベストって何?
アスベストとは一般的に自然界に存在する鉱物の一種で、その柔軟性、耐熱性、絶縁性の良さから幅広い用途で利用されてきました。特に、建築素材としての利用が広く、絶縁材、防音材、防火材として、あるいはコンクリートや壁材の補強材として使われていました。
しかしこのアスベスト、実は微細な繊維が空気中に飛散し、それを長期間吸い込むと肺の様々な病気を引き起こす可能性があるため、現在ではその使用は厳重に規制されています。
アスベストの特徴と用途
アスベストは石綿とも呼ばれます。画像からも分かるように非常な微細な繊維状の物質で、加工しやすく、熱や化学薬品に強く、絶縁性も高いという特性があります。この微細繊維はなんと太さがわずか0.02~0.03μm程で、中空管状をなしています。アスベストには主に以下のような化学的・物理的特性があるとされています。
アスベストの一種であるクリソタイルは500℃の熱でも安定状態を保つことができます。
アスベストは引っ張り強さが大きく、建材に使用した時に強度が出せるというのもひとつの特徴です。
酸性にはあまり強くないですが、耐アルカリ性には優れている特徴があります。
熱絶縁性とは、冷たいものを冷たいまま、熱いものを熱いままに保つ性質のことをいいます。つまり熱が逃げたり入ってくるのを防ぐために用いる材料にもってこいの物質なのです。
こうした特性から石綿は建築用途としてかなり有用とされてきたのです。
健康被害と法規制
しかし1970年代ごろから、アスベストの微細な繊維が人体に害を及ぼすことが明らかになります。
アスベストを吸い込むと肺がんや中皮腫(悪性の腫瘍)などを発症するリスクがあり、これらの健康上の危険性から、アスベストの製造や使用は徐々に規制されるようになり、2006年には日本でも建築材料としての新たな使用が全面禁止されました。
最近でも建造物に残留しているアスベストの取り扱いに関する法律が改正され、より安全な管理が求められるようになっています。
建物のどこによくアスベストが使われている?
それでは建物のいったいどこにアスベストが含まれているのでしょうか。
もし古い建物に住んでいたり、働いていたりする場合、それは知らず知らずのうちにアスベストの脅威にさらされているということを意味するかもしれません。
万が一に備え、具体的にどのような建材にアスベストが含まれ、それらがどの場所に使用されているのか詳しく見ていきましょう。
【建材別】アスベストを含む可能性の高い建材の種類
アスベストは、その耐熱性や絶縁性などの特性から様々な建材に利用されてきたことは先述の通りです。以下は特にアスベストを含む可能性の高い建材の一部です。
- 1.スレートや波板
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耐久性と防火性に優れているため、屋根材や外壁に使われた他、鉄骨などの耐火被覆材、吸音や結露防止材、内装材、煙突材などに使用されています。
- 2.吹付け材
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石綿とセメントに水を加えて混ぜ、主に鉄骨耐火被覆用途や吸音・結露防止用途として建物に吹き付ける建材です。
断熱効果や防火性があるため、天井や壁といった建物のあらゆる部分に吹き付けられています。
見た目は綿状のものが多く、手で触れるとほろほろと崩れる特徴があります。吹付け石綿は、飛散対策としてかつて”封じ込め”が行われた経緯もあるため、目視では確認できないところに残存している可能性があり注意する必要があります。
- 3.保温材
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熱絶縁性に優れたアスベストは保温材としても活用されました。主にボイラーの本体や配管の保温に使用されています。
- 4.フローリング材
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特にビニルアスベストタイル(VAT)という名前で知られるものがあります。見た目はほぼ正方形で厚みがあり、平滑な面を持つ一方で裏側はごつごつした質感があります。
またそれぞれの建材はアスベスト発じん性(粉塵の発生しやすさ)によって3段階にレベル分けされており、それぞれのレベルに合わせて適切な処理を行う必要があります。
【場所別】使用されている可能性のある場所
次に、物件内のどの部分にアスベストが使われている可能性があるか見ていきましょう。特に以下のような箇所は注意が必要です。
スレートや波板はアスベストを含むことが多く、特に古い建物の屋根材や下地に使われていることが多いです。
これもスレートや波板が使われることがあります。
湿度が高い場所では水や湿気に強いアスベストを含むフローリング材や壁材が使用されていることが多いです。
防水シートや防水塗料にアスベストが含まれていることがあります。
配管の断熱材や保護用のシートにアスベストが使用されることが多いです。特に水回りの配管やボイラー周辺は要注意です。
これらの箇所に使用されている建材がアスベストを含んでいるかどうかを確認するためには、見た目や質感だけでなく、建物の築年数や修繕履歴なども重要な手掛かりになります。
次章では、これらの建材を実際に見分けるための具体的な手法について説明します。その情報を利用して、自身の生活空間にアスベストが含まれていないか確認してみてください。
【画像あり】アスベストの見分け方6選
アスベストを含む建材を見つけるために、以下の6つの手法があります。それぞれの方法について、具体的な見分け方を画像とともに詳しく説明します。
① 外観の特徴から見分ける
アスベスト自体の見た目は、名前の通り繊維状でもこもこしており、クリソタイルの場合は白色、アモサイトの場合はやや茶がかった白色の色味を帯びていることが多いです。
しかしながら、建材に含有されている場合、ぱっと見分けることができないため、断面を燃やしてみて、繊維が確認できるかどうか、燃えないかどうか、不均質で繊維束があるかどうかで確認できる可能性もあります。
② 触れたときの特徴から見分ける
アスベストを触るのは危険じゃないのか?と思われがちですが、実は触っても無害です。ただし吸い込まないように細心の注意を払う必要があります。
アスベストは触るとまるで繊維を触っているかの感覚になります。指である程度こすっても繊維状が残るのが特徴です。
アスベストを含む吹き付け断熱材などは、手で触れるとパウダー状に崩れます。
③ 築年数から推測する
既に述べた通り、アスベストが使われている可能性は建物の築年数によっても大きく変わります。1970年代以降、アスベスト使用は減少傾向にありますが、まだ新しく使われていた時期もあります。2000年代以降の建物では使用されている可能性はほぼないと言えます。
以下は年代ごとに主に使用されていたアスベスト含有建材についてまとめたものです。
建造物の竣工 | アスベスト含有の可能性 | 主な素材 | 主な使用用途・場所 |
---|---|---|---|
1955〜1975年頃まで | 可能性大 | 吹付け石綿 | 耐火被覆材など |
1975〜1995年頃 | 可能性あり | 吹付けロックウール | 断熱・吸音材、天井や壁の重点断熱材 |
2004〜2006年 | ほぼ無し ※1重量%を超えるアスベストの使用が禁止された | – | – |
2006年以降 | 無し ※使用が全面禁止された | – | – |
④ 図面から読み解く
建物の図面を持っている場合、そこからアスベストを含む可能性のある箇所を探すことができます。
特に目視で確認できないような場所にアスベストが潜んでいる場合、図面等であたりをつけることがとても有効となります。
⑤ アスベストマークで判別
一部のアスベスト含有製品は、製品にアスベストマークがついている場合があります。
すべての製品にマークがついているわけではないため、マークがないからといってアスベストを含有しないわけではないですが、判別ポイントのひとつになるでしょう。
⑥ 石綿含有建材データベースで調べる
実は、政府によりアスベストが含まれている可能性のある建材のデータベースが提供されています。建材の名称やメーカー名が分かれば、それを使ってデータベースから検索することが可能です。
以上が、アスベストを含む可能性のあるかどうかを簡易的に見分けるための6つの方法です。
一方でこうした見分け方は完全ではないため、もしアスベストの含有が少しでも疑われる場合は安全性の観点から必ず専門家による調査を行うことをおすすめします。
まずはお近くの専門機関に相談してみてください。
アスベストとよく間違われる素材
アスベストの特性を持つ素材は他にも存在し、特にロックウールやグラスウールはアスベストと混同されやすいものです。
これらの素材も建築用の断熱材や吸音材として広く使われています。しかし、これらはアスベストとは違い、人体への危険性は低いとされています。
ロックウールとグラスウール
ロックウールは溶岩や鉄炉スラグなどに石灰を混ぜて高温で溶かし、この溶融した物質を細い繊維状に引き伸ばした人造鉱物繊維です。この製造過程においては、有害な繊維が発生しないことが確認されています。
また、グラスウールはガラスを高温で溶かし、ミクロン単位(1/1,000mm)の細い繊維にまで引き伸ばして製造された綿状の素材です。この素材もロックウール同様に人体への安全性が確認されています。
アスベストとロックウール、グラスウールの違い
一見すると、これらの素材はアスベストと似通っており、一部の人々はこれらを誤ってアスベストと判断してしまうことがあります。
しかし、アスベストが自然界に存在する鉱物から作られる一方で、ロックウールやグラスウールは人造の繊維素材のため、ある程度安全に使用できるように設計されているのです。
実際に2つの素材の繊維とアスベストの繊維とを比べてみると、アスベストは微細で鋭く尖っているのがわかります。これらの繊維が肺などに深く入り込むことで健康被害を引き起こすのです。
アスベストを見つけたときの対処法
もし自宅や職場などの建造物でアスベストが使われているのではと疑われる建材を見つけた場合、適切な対処というのは何なのでしょうか?
ここでは、アスベスト発見時の対処法について詳しく説明します。
まずは自己判断する前に相談を
もしアスベストを含む可能性のある繊維が見つかった場合、むやみに触れてみたり、剥がしたりすることは避け、何よりもまず専門機関に調査を依頼しましょう。
具体的にどのように対応すれば良いか、またはアスベストを含んでいるかどうかの判定は、決して自分自身だけで行うべきではありません。
誰に相談すべきか
最初に検討すべきは、専門のアスベスト調査会社や解体業者、または地元の公衆衛生センターや労働基準監督署への相談です。
これらの機関はアスベストの扱いに詳しく、また専門性の高いアドバイスを提供できます。
相談の際のポイント
相談の際には、以下の情報を事前に準備しておくとスムーズに話を進めることができます。
- 建築物の築年数とその場所
- 石綿製品の使用状況(損傷の有無、破損部分の面積など)
- 使用されている建材の情報や図面等
プロによるアスベスト調査〜除去の流れ
アスベストが疑われる場合は、まず調査をして実際に含有しているかどうかを報告しなければいけません。除去工事の前には必ず調査のプロセスが必要となります。
また、最近の法改正によりアスベストの管理や取り扱いが強化された点にも注意しなければいけません。実は、アスベストの調査や分析を行えるのは国が定めた講習や試験を修了した有資格者のみと定められました。
アスベスト調査の法改正やプロセスについては以下の記事で詳しくまとめているので参考にしてみてください!
調査や除去にかかる費用相場とは
アスベストの調査費用は1現場あたり10〜100万円が相場と言われています。
ただしこれはあくまでも参考にすぎません。実際は、調査する場所の広さやアスベストの量、除去するために必要な作業の大きさなどによって変動します。また、調査と除去の両方を一緒に頼む場合、個々の料金を頼むよりも割安になる場合があります。
各機関や業者のホームページから事前に料金を確認し見積もりをだしてもらいましょう。
どのような作業にどのくらいの費用がかかるか気になる方は以下の記事でおおよそのイメージをつけてみると良いかもしれません。
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まとめ
いかがでしょうか。アスベストの見分け方について、理解は深まったでしょうか。
一見すると同じような建築材料でも、ポイントを抑えることで、それがアスベストを含む建材であるかをある程度判断することは可能なのです。
同時に、しっかりとした調査や分析は専門機関に依頼しなければいけないということもご理解いただけたかと思います。
アスベストは自宅に存在しているだけで健康リスクが生じるわけではなく、アスベストが飛散してしまった場合に問題となります。
そこを理解し、適切に対処することが何より大切です。
この記事で紹介した方法を活用して、健康を守るためにも、定期的に自宅をチェックし、安心で快適な生活空間を維持できますよう祈っております。