アスベスト調査に必要な資格ってどんなのがある?取得するには一体どうすればいいの?アスベスト調査資格の講習内容や受講費用はどのくらい?調べてみるとなんだか複雑そうでスッキリしないですよね。
この記事ではアスベスト調査資格の講習について、誰でも簡単にわかるようにまとめてみました。
ぜひ受講の際の参考にしてみてください!
アスベスト調査に関わる資格とは
建物や不動産を所有している皆さん、そして建設・解体業に関わるプロフェッショナルの方たちにとって、アスベストの問題は切っても切り離せないくらいに重要かと思います。
アスベストはかつて建材として日本のいたるところで幅広く使用されていましたが、健康への重大なリスクが明らかになると、2006年以降は使用が禁じられ、関連する法規制も年々厳しくなってきました。
こうしたアスベストのリスクを管理するには専門的な知識が必要であり、そのために様々な資格が設けられています。
アスベスト調査の最新の法改正については以下の記事を参考にしてみてください!
調査資格の基礎知識:種類と特徴
一口に「アスベスト調査資格」と言っても、実は専門的な資格だけでなく、取得すると調査に役立つような資格など複数の種類が存在します。それぞれには特定の目的や権限が与えられているため、必要に応じて取得を考えなければなりません。
アスベスト調査に必要な2つの資格
2023年10月の法改正をうけ、現在アスベスト調査が認められているのは、以下の2つの資格の保有者のみとされています。
- アスベスト診断士 ※ただし条件があります。詳しくは後述
- 建築物石綿含有建材調査者
この2つの資格について詳しく見ていきましょう。
① アスベスト診断士
アスベスト診断士とは、アスベストが使用されている可能性のある建築物について、アスベスト含有の有無を調査し、その状況を正確に診断するために必要な専門的な資格です。この資格は、アスベストの適切な管理と除去を行うために、国や専門機関によって設定された一定の基準や知識、技能を持つことを証明します。
資格を取得するには、「一般社団法人JATI協会」が行う研修を修了しなければいけません。
注意すべき点は、全てのアスベスト診断士が調査を行えるのではなく、
● 2023年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている者だけが認められています。
② 建築物石綿含有建材調査者
『建設物石綿(アスベスト)含有建材調査者』は、建設物においてアスベストが使用されているかを専門的に調査・分析するための資格です。この資格は日本において、アスベストの適正な管理および除去作業を安全に実施するために重要な役割を担い、建物のオーナーや不動産業者、環境コンサルタント、そして建設・解体作業者にとって重要な資格といえるでしょう。
資格を取得するには、厚生労働省、国土交通省、環境省告示第1号に基づく講習を受講し、さらに修了考査に合格する必要があります。
また、建築物石綿含有建材調査者には、調査対象である建物の規模によって「一般」「一戸建て等」「特定」という3つの区分があるため、適切な区分の資格講習を受講し修了することが大切です。
「一戸建て等」「一般」「特定」の違い
「一戸建て等」は文字通り、戸建て住宅の調査を専門とする資格です。また、共同住宅の住居箇所における、全ての建材の事前調査が可能です。一方で「一戸建て」では住居部分の調査のみにとどまり、ベランダや廊下等の共用部分は対象外となります。
「一般」は一戸建て住宅を含むすべての建築物における石綿含有建材の調査を行うことができます。
「特定」は「一般」と同様に一戸建て住宅を含むすべての建築物における石綿含有建材の調査を行うことができますが、「特定」は定められた11時間の講義に加えて実地研修を受講し、筆記試験と口述試験に合格した調査者に与えられる資格です。
アスベスト診断士と建築物石綿含有調査者の違い
どちらの資格もアスベスト調査の業務を遂行するための専門性を証明するものですが、それぞれの資格に応じたトレーニングと実践経験が必要です。しかし実務におけるアプローチと重点に違いがあります。
項目 | アスベスト診断士 | 建築物石綿含有建材調査者 |
---|---|---|
認定機関 | 一般社団法人JATI協会 | 厚生労働省 |
必要な研修・講習 | アスベスト診断士養成研修会 | 都道府県労働局に登録された講習機関での講習 参考:https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/course/ |
事前調査資格 | 2023年9月30日以前の登録が必要 | 資格を有するもの |
有効期限 | なし | なし |
アスベスト診断士は、一般社団法人JATI協会が認定している資格です。
アスベスト診断士として認定を受けるためには、まずJATI協会が主催している「アスベスト診断士養成研修会」に参加します。研修会を終えた後には、専門的な知識を試す試験を受け、合格しなければなりません。
一方、「建築物石綿含有調査者」は厚生労働大臣によって認定される公的資格で、同様に事前調査を行う専門家として認められています。この資格や講習については、2020年7月に改正された石綿障害予防規則等によって規定されています。
両者とも、アスベスト事前調査を行えるものとして認められている資格ですが、アスベスト診断士の方は2023年9月30日以前に資格登録したもののみ認められていることに注意が必要です!
その他のアスベスト調査関連資格
① 石綿取扱作業従事者
アスベストに携わる作業員は、予め石綿取扱作業従事者の講習を受ける必要があります。
この資格がなければ解体現場に入れないばかりか、アスベストを含有した建材を運ぶこともできません。これは労働安全衛生法で取得が義務づけられており、資格のない作業員を働かせると罰則の対象になります。この資格は、特別教育を受けることで誰でも取得することができます。
② 石綿作業主任者
建物の解体や改修の際、アスベスト除去に関わる作業の計画や、現場の指揮・監督を行うために必要な国家資格です。
アスベストの除去現場では、石綿作業主任者1名の選任・配置が義務づけられているため、アスベストが関わる現場において、ニーズの高い資格といえるでしょう。
石綿作業主任者となるためには、労働安全衛生法に基づく技能教育を修了し、その後、厚生労働省が定める試験に合格する必要があります。
資格が求められる背景
アスベストによる甚大な健康被害を予防するために平成17年に制定された石綿障害予防規則、通称「石綿則(いしわたそく)」では、義務付けられているはずの事前調査や解体・改修工事を行う際に必要な措置が実施されていないという事例が散見ました。
こうした背景を受け、大気汚染防止法が改正され、2023年10月1日以降に着工される建築物の解体・改修工事について、有資格者によるアスベストの有無の調査が義務付けられることになりました。
もし、建物の解体や改修工事を予定している場合、作業員や委託業者に適切な資格があるかどうかを必ずチェックするようにしましょう。
アスベスト調査者資格取得における講習内容
ここからは、アスベスト調査に不可欠な「建築物石綿含有建材調査者」の資格を取得するために必要な講習の内容について見ていきましょう。
建築物石綿含有建材調査者の講習は、国土交通省の公示を受け、都道府県の労働局に登録された機関で実施されます。
そのため、講習内容は概ね同じですが、講習を実施する機関によって講習日程や構成は異なります。3日間で講習と終了考査を行うところもあれば、2日間で終了考査まで行う機関もあります。
講習の内容とスケジュール
建築物石綿含有建材調査者の講習は、まずアスベストの基本知識から始まり、以下のような内容が主に講じられます。
- アスベストの特徴と種類:アスベストの特性、種類、歴史、主な用途などを学びます。
- アスベストの安全管理:アスベスト作業を安全に行うための工法、防護具の使用方法、作業中の注意点等を学びます。
- アスベストの規制:アスベストに関する国や地域の法律、規制、ガイドラインなどを学びます。
- アスベストの調査及び除去:建物内のアスベストの調査方法、除去方法、廃棄物の処理方法等を学びます。
- アスベストの採取・分析:アスベストのサンプリングや分析手法について学びます。
- 調査報告の作成:アスベスト調査の報告書の作成や提出方法について学びます。
講習終了後、筆記形式の修了考査があり、基準点以上の成績を修めると「一般建築物石綿含有建材調査者」の修了証明証が発行されます。
「一戸建て等」では7時間、「一般」では全部で11時間の講習が定められています。
以下は「一般」と「一戸建て等」における講習のスケジュール例を紹介します。
参考:建設業労働災害防止協会
また、上記に加え実地研修と口述試験に合格することで「特定建築物石綿含有建材調査者」の修了証明書が付与されます。具体的な講習実施については、登録機関によって異なるため、事前にホームページなどで要項を確認することをおすすめします。
講習や試験の難易度とは?
講習はアスベスト調査に不可欠となる知識や技術を学びますが、難しすぎるということはありません。講習を受ける際は、資格試験に合格することは目標としつつも、要点をしっかりと理解しアスベストを安全に取り扱えるようになることを目指しましょう。
「一般建築物石綿含有建材調査者」の筆記試験はマークシート形式、60分間で行われます。合格の基準は60%以上の正答率が必要とされています。
それでは、実際の試験がどのくらい難しいのかを過去の合格率のデータをもとに見てみましょう。
受験生に役立つ、最近の合格率データ
一般財団法人日本環境衛生センターが公開している合格率を見ると、実施年度にもよりますが約60%~80%となっており、努力と適切な学習があれば合格は決して不可能な目標ではないことがわかります。事前に過去問等を活用して傾向と対策を練り、適切な学習計画を立てることが重要となります。
過去問の紹介
試験対策として過去問を取り入れることで、試験の形式や求められる知識の範囲を把握することができます。過去問は各機関のウェブサイトで公開されているケースが多いため、試験の前に確認として使用するのがおすすめです。
過去問例:
問題 大気汚染防止法に関する記述として、適当でないものはどれか。
(1)大気汚染防止法では 2020(令和 2)年 6 月 5 日に、石綿成形板等のレベル 3 を除い たレベル 1、2 のみが適用対象とされた。
(2)大気汚染防止法は、大気汚染に関して、国民の健康を保護するとともに、生活環境を 保全することを目的としている。
(3)大気汚染防止法では事前調査結果は、工事終了後 3 年間保存する必要がある。
(4)大気汚染防止法の事前調査は、石綿障害予防規則の概要に記載内容と同じである。
2023年10月実施 日本建設情報センターより
建築物石綿含有建材調査者講習の実施機関
建築物石綿含有建材調査者の資格講習を実施している機関は、国の規定(平成30年厚生労働省・国土交通省・環境省告示第1号)に基づき、都道府県労働局に登録されています。
令和5年10月2日時点での全国の登録機関数は125機関に及びます。
登録講習機関の一覧はこちら
講習受講にかかる費用とは?
アスベスト調査資格の講習受講にかかる費用は、提供する教育機関やカリキュラムの内容によって異なりますが、おおよその相場としては、5万円前後を目安としています。これには教材費や実習に使用する材料費、修了考査が含まれる場合が多いです。ただし必ず含まれるわけではないので、受講前に機関の公式サイト等でしっかり調べましょう。
以下は、主な講習実施機関での費用をまとめたものです。
ぜひ参考にしてみてください!
主な講習実施機関と費用
(一社)日本環境衛生センター
受講料(消費税込・テキスト代込)49,500円
CIC日本建設情報センター
受講料(消費税込・教材費込)48,400円
(一社)企業環境リスク解決機構
受講料(消費税込・教材費込)55,000円
資格の更新と旧制度で取得した資格の取り扱い
一度取得した資格の更新やもし旧制度で取得した場合、それらがどのように取り扱われるかは理解しておく必要があります。
資格の保持と更新に必要な条件
新たな建築物石綿含有建材調査者講習登録規定によると、資格の有効期限(更新制度)は廃止されました。そのため、一度資格を取得してしまえば半永久的に活用することができるということになります。
旧制度で講習を受講した場合
もし旧制度で建築物石綿含有建材調査者資格を取得した場合はどのようになるのでしょうか。この場合、講習実施機関にもよりますが、新制度の「特定建築物石綿含有建材調査者」としてみなされることとなります。そのため、新たに講習を受けたり資格試験を受けたりする必要はありません。
受講資格を満たしているかは要注意!
講習会を受講するためには、国によって定められた受講資格を満たしている必要があります。予めご自身に受講資格があるかを確認しておきましょう。
受講資格は以下のいずれかに該当する場合に限ります。
- 石綿作業主任者技能講習を修了した者
- 大学において、建築に関する正規の課程またはこれに相当する過程を修めて卒業した後、建築に関して2年以上の実務経験を有する者
- 短期大学において、建築に関する正規の課程またはこれに相当する過程を修めて卒業した後、建築に関して3年以上の実務経験を有する者
- 高等学校または中等教育学校において、建築に関する正規の課程またはこれに相当する過程を修めて卒業した後、建築に関して、7年以上の実務経験を有する者
- 建築に関して、11年以上の実務経験を有する者
- 特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者で、建築物石綿含有建材調査に関して5年以上の実務経験を有する者
- 建築行政に関して2年以上の実務の経験を有する者
- 環境行政(石綿の飛散の防止に関するものに限る。)に関して2年以上の実務の経験を有するもの
- 産業安全専門官若しくは労働衛生専門官のいずれかに該当する者
- 労働基準監督官として2年以上職務に従事した経験を有する者
資格取得のメリット
アスベスト調査資格を取得することは時間と労力を要しますが、その報酬は計り知れないものです。ここでは、その資格を得ることの大きな利点を三つ紹介します。
メリット1:有資格者に認められた職務ができる
令和5年10月1日より、建築物等の解体・改修作業を行う際に、対象建築物等の石綿等使用有無についての調査が必要とされ、さらにその事前調査は、建築物石綿含有建材調査者が行うことが義務付けられました。したがって、建築物石綿含有建材調査者の資格がない場合、従来のような調査が行えず、有資格者に委託するしか選択肢がなくなります。改正法の施行が最近であったことから、機関によっては有資格となる調査者が不足するケースも存在し、かなり需要の高い資格であることは間違いないでしょう。
メリット2:専門家としての信頼性向上
資格を持っているということは、その分野の専門知識と技能を保有しているという一定の証明にもなります。クライアントや雇用主は、正式な調査資格を持つ人物を信頼し、安心して重要なプロジェクトを任せる可能性が高いです。例えば、不動産取引において、アスベスト調査資格を持つ評価士は、売買の信頼性を高める重要な役割を担います。これにより、キャリアの可能性が広がり、収入や業務の範囲が拡大します。
メリット3:業界での競争力の強化
特に建設・解体業や不動産管理業界では、アスベスト調査資格は一つの差別化要素となり得ます。
この資格を持っていると、アスベストに関する法的要件を十分に理解しているとみなされ、業務の精度と品質が保証されます。
たとえば、アスベスト管理計画の策定においては、法的な遵守を確実にし、高いレベルの安全管理を提供できる強みとなります。
市場での競争が激しい中、資格はあなたやあなたの会社を他とは一線を画すものとして際立たせ、クライアント獲得においても有利に働きます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
以上、アスベスト調査に必要な資格の種類と取得方法、講習の内容や試験の難易度、さらには費用まで網羅的に解説しました。
アスベスト調査資格は、専門的な知識と対策能力の証明に役立ちます。法規制への対応や信頼関係構築にも有用ですが、必ずしも全ての関係者が資格を取得する必要はありません。
講習や試験の申し込みを考えている方は、自身の状況と必要性をよく考慮した上で決定してください。資格取得は一つの選択肢に過ぎず、専門知識を身に付けるための他の方法も存在します。
資格取得のプロセスは困難なものですが、アスベスト問題への取り組みにおいては、多様なアプローチが可能です。資格があなたの専門性向上にどのように役立つかを慎重に検討してみてください。
最終的に、資格取得の決定は個々の目的と状況に応じたものであり、それがより安全で健康的な生活環境作りに貢献することを願っています。
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