アスベストの事前調査報告の義務化について時系列で詳しく解説!

法改正を義務化

アスベストの調査・報告は義務化が進んでおり、関連法律が複雑化しています。

その背景として2006年から健康被害を及ぼすアスベストの法制度が進んでいます。2021年(令和3年)から3回に分けて施行されています。

2022年4月には、アスベストの事前調査報告が義務化され、2023年10月からは、事前調査には専門の資格が必要になりました。

この記事では、その詳細から罰則、調査方法に関する情報までをわかりやすくまとめます。

目次

アスベスト事前調査・報告の義務化を時系列で詳しくまとめました

アスベスト関連の法律は、2023年まで適宜改正されてきました。

主な内容は以下のようになっています。

表1:大気汚染防止法の改正内容

2021年4月1日レベル3建材も規制対象へ追加など

アスベスト関連法である、改正大気汚染防止法の一部が、2021年(令和3年)4月1日から施行されました。

改正後の主な変更点(一部)
  1. アスベスト事前調査の規制強化
  2. レベル3建材が規制対象に
  3. 特定粉じん排出等作業の記録の3年間の保存

2022年4月1日 アスベスト事前調査・報告の義務化へ

アスベストの事前調査及び報告が2022年4月より義務化されました。

法改正により、建築物内にアスベストが使用されている可能性がある場合、行政に対して調査報告が義務になります。石綿事前調査結果報告システムから電子申請で報告します。

詳しくはこちらを御覧ください。

2023年10月1日 有資格者によるアスベスト事前調査の義務化へ

2023年10月からは、アスベスト事前調査を実施する者も有資格者に限定されるようになりました。

正確かつ適切なアスベスト調査を実施するためには、確かな知識と技術が不可欠です。このため、国は有資格者のみが事前調査を実施できるように規定を厳格化しました。

事前調査を行うことができる有資格者については、こちらの記事を御覧ください。

アスベスト事前調査をしないとどうなる?

アスベスト調査報告を怠った場合、または虚偽の報告を行った場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

さらに言えば、アスベスト除去作業などにおける措置義務に違反した場合は、3ヶ月以下の懲役刑または30万円以下の罰金が科せられることになっています。

この罰則は、2021年4月から、指導などの命令を挟まずに、直接罰せられることになっています。

飛散防止対策が行われていたとしても、事前報告がなければ罰則の対象になるので注意が必要です。

有資格者に事前調査を依頼

アスベスト事前調査は、アスベストに関する知識と、建築物の調査に精通した専門家に依頼する必要があります。2023年10月をもって有資格者でないと依頼できなくなっています。

現地調査をせずに工事をすすめる「みなし工事」

事前調査の手順は、図面調査・分析調査などに分かれています。

現地を調査した時点で、分析調査を行わずに「アスベストがある」とみなして工事を行うこともできます。

これを「みなし工事」といいます。

分析費用がかからない点や、工事開始までの期間が短縮されるというメリットもありますが、アスベストが含まれていない場合は余分な費用がかかってしまうおそれもあるので、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

書面及び目視による現地調査

アスベストの事前調査は、主に書面による情報収集と現地での目視調査に分けられます。

まず、建物の設計図や過去の改修履歴などの文書をもとに、アスベストが使用されている可能性がある箇所を特定します。

次に、書面が紛失しているなどの場合があるので、アスベストが使用されている可能性がある箇所以外の場所も含めた目視調査を行います。

報告書の作成

調査が完了したら、アスベストが使用されている可能性がある建築物を採取してアスベストの分析調査をします。そして、その結果をまとめた報告書を作成します。

報告時の専用電子システムの利用について

石綿事前調査結果報告システムから電子申請で報告します。 報告はGビズアカウントの発行をし、報告システムを使用します。詳しくは厚生労働省のHPをご覧ください。労働基準監督署と地方公共団体の両者に対して、オンライン上で報告できます。

参考:gBizIDの取得について

事前調査結果の報告書について、詳しく知りたい方は以下の記事を御覧ください。

建築物石綿含有建材調査者(有資格者)になるには?

アスベストを扱う際には専門的な知識が求められます。そのため、建築物のアスベストの事前調査を行う者は、建築物石綿含有建材調査者という資格者に限られます。(2023年10月1日〜) 厚生労働省、国土交通省、環境省の講習の受講後、試験に合格する必要があります。

アスベスト事前調査に補助金はある?

アスベスト問題は市民の安全・健康に関わる大きな課題となっており、事前調査への補助金制度がいくつかの自治体で設けられています。

補助金制度について(国土交通省)

アスベスト事前調査に関する補助金は、建物所有者が調査費用の一部を補助してもらえる制度です。

これにより、建物所有者は調査を行いやすくなり、アスベスト問題の早期解決につながります。

補助金の額や適用条件は自治体や制度によって異なるため、具体的な内容については各自治体の公式情報を参照することをおすすめします。

自治体別の補助金制度の具体例

新宿区

アスベストの含有調査において最大で25万円の補助が受けられます。

参考:新宿区HP

神奈川県

アスベストの除去工事と合わせての事前調査について、最大で25万円の補助が受けられます。(一検体のアスベスト含有の調査のみは16万円まで)

参考:神奈川県HP

佐賀県

県内の全ての民間建築物が対象です。上限25万円の補助が受けられます。

参考:佐賀県HP

ここで紹介した補助金制度は一例です。このような補助金制度をうまく活用して、アスベストの事前調査を行いましょう。

補助金について詳しくまとめた記事を参考に御覧ください。

アスベスト事前調査・報告の義務が必要ない場合も?

アスベストは過去に広く利用されていたため、多くの建築物に存在しています。そのため、リノベーションや解体工事を行う際には、原則としては、アスベストの事前調査・報告が義務化されています。

しかし、特定の条件を満たす場合は、調査・報告の義務がない場合があります。

表2:調査・報告義務の例外となる工事

事前調査不要のケースについては、こちらの記事を御覧ください。

まとめ

アスベストは過去に多くの建築物で使用されており、安全対策として事前調査や調査結果の報告が義務付けられるようになりました。

アスベストの事前調査・報告が義務になったからこそ、しっかりとした知識を持ち対策を取る必要があります。

しかし、具体的な対応や法的要件は複雑です。ぜひ専門家への相談を検討してください。専門家は最新の法律やアスベストに関しての専門知識を持っており、適切なアドバイスをしてくれます。

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この記事の執筆者

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アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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